日本ではこう食べる

アメリカのみそ汁にはスプーンが付く:英語圏から見たみそ汁の飲み方と具

アメリカの日本料理店では、みそ汁はれんげのようなスプーンと一緒に出てきます。英語の記事が説く「日本式の飲み方」、チキンブロスで作るみそ汁、豚汁やけんちん汁との境目を日本の資料で確かめます。

豆腐の角切り、わかめ、小口切りのねぎが入った漆塗りの椀のみそ汁。横にご飯の茶碗がある。

アメリカの日本料理店の多くでは、みそ汁は小さな椀に、アジア風のスープスプーンを添えて出てきます。英語の料理メディア The Takeout も「アメリカでは、みそ汁はふつう小さな椀に東アジア風のスープスプーンを添えて出される」と書いています(英語の原文を訳したもの)。

そのため英語圏では、「日本ではみそ汁をどう飲むのか」が記事になります。椀を持ち上げて口をつけ、具は箸で食べる。日本の読者には当たり前のことですが、英語では作法の解説として、わざわざ説明されています。この記事では、英語圏の書き方と、日本の資料が示すみそ汁の具、豚汁やけんちん汁との境目を並べます。

要点

  • アメリカではスプーンを添えて出すのがふつうだと、英語の記事は書いています。 その記事も、日本では椀を持ち上げて飲み、具は箸で食べると紹介しています。スプーンが定着した理由を説明した資料は見つかりませんでした。
  • みそ汁の具の1位は豆腐です。 味の素の1万人調査では、8割以上が豆腐をよく使うと答えました。わかめ、油揚げ、ねぎ、大根が続きます。
  • 英語のレシピには、チキンブロスで作る「みそ汁」もあります。 正直に「アレンジ」と名乗っていますが、だしを使わない別のスープです。
  • 豚汁はみその汁、けんちん汁は確認したレシピでは醤油味です。 炒めるかどうかでは区別できません。

英語圏が説明する「日本式」

英語でこの作法をはっきり書いているのが、nippon.com の一汁三菜の英語ガイドです。岐阜大学准教授で小笠原流礼法を教える柴崎直人氏が監修しています。ガイドは「汁物は椀を口元に持ち上げていただく」と書き、汁椀は軽い漆塗りの木の椀で、口元まで持ち上げるのでスプーンは「必要なかった」と理由を添えています(いずれも英語の原文を訳したもの)。ご飯は左手前、汁は右手前で、こぼす危険を減らす配置だとも説明しています。

持ち方も、英語でていねいに解説されています。右手で椀を取って左手で支え、左手に落ち着いてから右手で箸を取る。右側の椀に左手だけを伸ばすのは事故のもとだ、とガイドは注意しています。略式として、箸を持ったまま椀を上げ下ろししてもよいとしています。

日本語の情報誌 Precious.jp も、マナー講師の平川直子氏の話として、汁椀を片手で持ってがぶ飲みしないこと、ふたのある椀は両手で扱うことを挙げています。

「フタは逆さにして、両手でテーブルに置きましょう。」

手皿もマナー違反で、代わりに懐紙を手のひらにのせるよう勧めています。持ち上げてよい器については、こう線を引いています。

「手のひらサイズより大きな器でも、汁物やご飯類の入った器は持ち上げても構いません。」

小鉢や刺身の醤油皿のような手のひら大の器は持って食べ、焼き魚や天ぷらの平皿は置いたまま、という整理です。

アメリカの店がスプーンを出す理由

The Takeout も Chowhound も、アメリカの出し方を紹介したうえで、日本では椀を持ち上げて具は箸で食べると説明しています。けれども、なぜアメリカの店でスプーンが標準になったのかは、どちらも書いていません。当サイトも、それを説明した資料は見つけられませんでした。スプーンは間違いではなく、アメリカの店の出し方です。

日本のみそ汁に入るもの

辞書の定義は広く、デジタル大辞泉は野菜、豆腐、海藻、貝などを実にして、だしにみそを溶き入れた汁としています。ブリタニカ国際大百科事典は魚介、肉、加工品も挙げ、だしにはかつお節、煮干し、昆布を使うのがふつうだとしています。

家庭で実際に何を入れているかについて、当サイトが見つけたいちばんよいデータは、「ほんだし」の味の素によるネット調査です。2018年3月、月に1回以上みそ汁を作る(インスタントを除く)20〜69歳の1万人が対象です。1社の調査なので、ひとつの断面として見てください。

「8割以上の人が、豆腐をよく使うと回答。」

順位具備考
1豆腐8割以上がよく使う
2わかめ割合は非公表
3油揚げ割合は非公表
4ねぎ割合は非公表
5大根割合は非公表

地域ごとの人気の具も、割合なしで紹介されています。北海道、沖縄、四国では卵、鳥取と島根ではしじみです。しじみの結果は、農林水産省が「宍道湖産ヤマトシジミ」を地理的表示に登録したときの説明とも合います。農林水産省は、しじみ汁や吸い物に欠かせない食材で、家庭でも飲食店でも定番だとしています(みそ仕立てか澄まし仕立てかは書かれていないので、当サイトもどちらとはしません)。

意外に合う具では、トマトが1位で、かぼちゃ、さつまいも、納豆、レタスが続きました。

上位5つ以外が「日本らしくない」わけでもありません。山口県のサイトに載る周南市の小学校の給食レシピは、じゃがいもとコーンのみそ汁です(玉ねぎ、油揚げ、ほうれん草、煮干しのだし)。東京都港区のサイトには、昆布とかつお節のだしで作る白菜となめこのみそ汁があります。きのこは、農林水産省が紹介する石川のめった汁のしいたけ、市川市の豚汁のえのきのように、具だくさんの汁にも入ります。アメリカのスーパーで手に入る日本の野菜については、アメリカの店で買える日本の野菜で書きました。

チキンブロスで作る英語のみそ汁

英語のレシピには、みそを使って別のスープを作り、そう明言しているものもあります。Belly Full の Chicken Vegetable Miso Soup は「定番のみそ汁のアレンジ」と名乗っています(英語の原文を訳したもの)。オリーブオイルでにんじん、玉ねぎ、しいたけ、にんにく、しょうがを炒め、シラチャーを少し加え、減塩のチキンブロス5カップ(アメリカの計量カップ)に白みそ、鶏むね肉、白菜を合わせます。だしは使いません。

正直に名乗った、ちゃんとしたスープです。違いは具ではありません。しいたけ、にんじん、白菜は日本の汁物にも入ります。違うのは土台と味つけで、だしの代わりのチキンブロス、最初のオリーブオイル炒め、にんにく、しょうが、シラチャーです。当サイトが確認した日本の資料、つまり辞書、味の素の調査、農林水産省や自治体のレシピに、こうした作り方のみそ汁はありません。英語圏でだしがどう誤解されているかは、だしは「フィッシュストック」ではないで書きました。

みそ汁の境目:豚汁とけんちん汁

豚汁とけんちん汁は、「炒めるか、煮るか」という作り方で分けたくなります。日本の資料は、それを決まりとしては支持していません。

豚汁。 コトバンクの3つの辞書は、どれも豚肉と野菜のみそ仕立ての汁と定義しています。

「ぶた肉のこま切れと野菜とを入れた味噌仕立ての汁。」 — デジタル大辞泉(小学館)「豚汁」

どの定義にも炒めることは出てきませんし、レシピも両方あります。農林水産省の豚肉の郷土料理の特集は、石川のめった汁を根菜たっぷりの豚汁として紹介し、作り方は煮立っただしで煮るだけです。京都市のサイトに載る給食の豚汁も同じです。一方、市川市のサイトの豚汁は、豚肉、里いも、大根、にんじん、ごぼうを油で炒めてからだしを加えます。

根菜は典型的で、農林水産省もめった汁について「使う根菜に決まりはなく」と書いています。ただ、たくさん入れる必要はありません。京都の給食の豚汁は、根菜はにんじんだけで、あとは玉ねぎです。

けんちん汁。 農林水産省の「うちの郷土料理」(神奈川県)は、炒めることで定義しています。

「大根やにんじんなどの野菜を油で炒めてから煮込む料理。」 — 農林水産省「うちの郷土料理」けんちん汁(神奈川県)

農林水産省は、名前の由来の一説として鎌倉の禅寺、建長寺を挙げています。寺のものは精進料理で、動物性の食材を使わず、だしは昆布としいたけです。寺のレシピを家庭向けに少し変えた農林水産省のレシピは、塩、醤油、みりん、少しの酒で味をつけ、豆腐は手でくずして入れます。家庭の作り方はさまざまで、岩手県のサイトのけんちん汁も炒めて醤油で味つけしますが、だしに煮干しとかつお節を使うので精進ではありません。確認した2つのけんちん汁は、どちらも醤油味でした。みそ味のけんちん汁がどこかの地域で一般的かどうかは確かめられなかったので、ここでは決めずにおきます。

みそ汁豚汁けんちん汁
味つけみそみそ確認したレシピでは醤油
肉必須ではない豚肉が決め手寺のものはなし。家庭のだしは魚を使うことも
最初に炒めるかひかり味噌の基本の作り方では炒めない炒めることもある炒める(農林水産省の定義)
豆腐ひかり味噌の作り方では角切り定義にはない。京都は油揚げ、農林水産省と市川市のものは豆腐なし手でくずす
よく入るもの決まりはない。豆腐、わかめ、油揚げ、ねぎ、大根が多い豚肉と根菜を自由に(京都はにんじんと玉ねぎだけ)大根、にんじん、ごぼう、里いも、こんにゃく、豆腐など

豚汁はみそ汁の一種でしょうか。ブリタニカ国際大百科事典はみそ汁の定義に肉を含めているので、その基準なら入ります。ただし、豚汁には独自の名前と辞書の項目があります。

豆腐とわかめのみそ汁(1人分)

ひかり味噌が公開している基本の作り方を、2人分から1人分にしたものです。当サイトでの試作はしていません。

味の素の調査の上位5つのうち3つ、豆腐、わかめ、ねぎを使います。2人分の作り方と、みそ汁を沸騰させない理由の研究はアメリカの「白みそ」は甘くないにまとめています。

材料(1人分)

  • だし 200mL
  • 豆腐 75g
  • 塩蔵わかめ 10〜15g(乾燥わかめなら袋の表示どおりにもどす)
  • 長ねぎ 1/8本(約12〜13g。逗子市の資料の、中1本約100gから当サイトが計算)
  • みそ 大さじ1(約18g。ひかり味噌のアメリカ向けの表示による。業界団体のみそ健康づくり委員会は、1杯分を約15gとしています)

作り方

  1. わかめをさっと洗って水に2〜3分つけ、3cmほどの幅に切ります。豆腐は1.5cm角に切ります。長ねぎは薄切りにします。
  2. 小鍋でだしを温め、豆腐とわかめを入れて煮立てます。
  3. 具が温まったら火を止めます。
  4. 煮立ちがおさまったら、みそを溶き入れます。再び火にかけますが、沸騰させません。
  5. 煮えばなに長ねぎを入れ、さっと混ぜて火を止めます。

ひかり味噌は、みそを入れたあとについてはっきり書いています。

「風味が落ちるので決して沸騰させないでください。」

アメリカの台所で日本のレシピを作るときの計量の違いはアメリカの台所で和食を作ると、英語圏での豆腐の種類の呼び方については絹ごし豆腐の記事で書きました。

よくある質問

アメリカの日本料理店では、みそ汁はどう出てきますか。 小さな椀に、東アジア風のスープスプーンを添えて出すのがふつうだと、英語の料理メディアは書いています。スプーンが定着した経緯を説明した資料は見つかりませんでした。

英語圏では、日本のみそ汁の飲み方はどう紹介されていますか。 椀を両手で取り、左手で持って口をつけ、具は箸で食べると、作法として解説されています。小笠原流礼法を教える柴崎直人氏が監修した nippon.com の英語のガイドも、そう説明しています。

英語のみそ汁のレシピは日本のものと違いますか。 だしではなくチキンブロスを使い、オリーブオイルで炒め、にんにくやシラチャーを加えるレシピもあります。アレンジだと明記したものもあり、別のスープと考えるのが正確です。

この記事の調べ方

日本語の資料を土台にしています。農林水産省(郷土料理のデータベース、広報誌『aff』、地理的表示の登録)、山口県、岩手県、京都市、市川市などのサイトに載るレシピ、コトバンクの辞書、味の素のみそ汁調査、ひかり味噌の基本の作り方、2つの作法ガイド(柴崎直人氏監修の nippon.com と、平川直子氏が登場する Precious.jp)です。英語圏の例は The Takeout、Chowhound、Belly Full からとりました。日本語資料からの引用は原文のまま、英語資料からの引用は当サイトが訳したもので、どちらも短くとどめています。作り方はひかり味噌の公開レシピをもとにしたもので、当サイトでは試作していません。1人分の分量は当サイトの計算です。発行した部署の名前がない自治体のPDFは、掲載しているサイトの名前で示しています。

参考資料

国と自治体:

メーカー:

業界団体:

辞書:

作法:

英語圏の例:

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