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アメリカの「白みそ」は甘いとは限らない:英語圏と日本のみその分け方

英語圏のレシピはみそを「白」と「赤」の色で呼び分けます。ところがアメリカでひかり味噌が売る「white miso」は、信州系の辛口みそです。日本の資料が使う麹・味・色の3つの軸と、塩分の差を確かめます。

木の板の上に並んだ3つの小さなみその山。左から淡いクリーム色、明るい黄褐色、濃い赤褐色。

英語圏のレシピは、みそを「white miso(白みそ)」か「red miso(赤みそ)」かで指定するのがふつうです。色が種類の名前になっています。日本の資料は色だけでは分けません。まず麹の種類で分け、次に甘口か辛口か、そして色を見ます。色は3つの軸のひとつにすぎません。

この違いは塩分に出ます。日本食品標準成分表では、甘みそ(米みそ)の食塩相当量は100gあたり約6g、赤色辛みそは約13gです。そしてアメリカで「white miso」と書かれた瓶は、名前から想像するよりずっと辛口寄りのことがあります。英語のレシピが「white miso」と書いたとき、それが西京みそなのか信州みそなのかで、塩分はほぼ倍違います。

要点

  • 麹で分けると4種類:米みそ、麦みそ、豆みそ、調合みそ。生産量の約85%が米みそです(農林水産省、2020年)。
  • 味で分けると3段階:甘、甘口、辛口。
  • 色で分けると:白、淡色、赤。色はおもに発酵・熟成中のメイラード反応によるもので、大豆の煮方や蒸し方で変わります。塩分の目安にはなりません。
  • 塩分は約2倍の幅:100gあたり甘みそ6.1g、淡色辛みそ12.4g、赤色辛みそ13.0g。
  • アメリカの「white miso」:調べたひかり味噌の米国向け商品は、信州系の淡色辛口みそでした。
  • みそを入れたら沸騰させないとひかり味噌は書いています。2009年の日本の研究では、長時間の加熱で香りが大きく失われました。

麹で分ける4種類

英語のレシピがふつう色で呼ぶのに対し、日本の資料はまず麹で分けます。みその日本農林規格(JAS)の制定に向けた農林水産省の2022年の資料は、米みそ、麦みそ、豆みそを定義したうえで、それ以外をまとめて「調合みそ」としています。

「…米みそ、麦みそ及び豆みそ以外のみそを総称して「調合みそ」という。」 — 農林水産省「みその日本農林規格の制定について」(2022年2月)

合わせみそや、ほかの穀物の麹を使ったみそがここに入ります。麦みそは大麦またははだか麦を使うものとされているので、小麦麹のみそは調合みそです。同じ資料(食品需給研究センターのデータ)による2020年の生産量は次のとおりです。

種類生産量(2020年)割合
米みそ404,717 t85%
調合みそ28,805 t6%
豆みそ24,712 t5%
麦みそ16,466 t4%*
合計474,700 t

*割合は農林水産省の資料の表記どおり。重量から計算すると麦みそは3.5%です。

甘口と辛口を決めるもの

業界団体のみそ健康づくり委員会のQ&A冊子によると、決め手はおもに麹と大豆の比率です。辛口みそは麹が大豆よりやや少なく、塩分は12%前後。甘みそは麹を多く使い、塩分はふつう6〜7%です。九州や瀬戸内の甘口の麦みそは10%前後としています。

色が示すもの、示さないもの

同じ冊子は、色を糖とアミノ酸のメイラード反応によるものとしています。色を濃くしたり淡く保ったりする要因は3つです。

  • 大豆の煮方。 白みそは大豆を蒸さずに煮て、水に溶ける糖を煮汁に逃がします。高温で長く蒸すと赤みが強くなります。
  • 熟成の温度と期間。 温度が高いほど、期間が長いほど色は濃くなります。
  • 種類と麹の比率。 ひかり味噌は、豆みそは一般に赤系、米みそや麹の多いみそは白系に分類されるとしています。

色と塩分は連動しがちですが、同じものではありません。

みそ(食品成分表の区分)食塩相当量(100gあたり)ナトリウム(100gあたり)大さじ1(18g)あたりのナトリウム*
甘みそ(米みそ)6.1 g2,400 mg約430 mg
麦みそ10.7 g4,200 mg約760 mg
豆みそ10.9 g4,300 mg約770 mg
淡色辛みそ(米みそ)12.4 g4,900 mg約880 mg
赤色辛みそ(米みそ)13.0 g5,100 mg約920 mg

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(文部科学省)。*大さじ1の列は、ひかり味噌の米国向け栄養表示にある「1 tbsp(18g)」を使って当サイトが計算したもの。実際の大さじ1の重さは詰め方で変わります。

甘みそは辛口の米みその約半分の塩分です。また赤系の豆みそは、淡色辛みそより塩分が少ない。色だけでは塩分はわかりません。

地域のみそ

名前麹味・色地域日本の資料による特徴
信州みそ米辛口・淡色長野ひかり味噌は「淡色で辛口」。みそ健康づくり委員会は米みその生産量の約40%としています。
仙台みそ米辛口・赤宮城マルコメによると、伊達政宗の時代から伝わる赤色辛口みそ。
西京白みそ米甘・白京都、関西麹が多く、塩分が少なく、熟成が短い。
江戸甘みそ米甘東京マルコメが甘い米みそとして挙げています。
八丁味噌・豆味噌大豆赤褐色・硬め愛知、三重、岐阜大豆と塩だけで長期熟成。
九州麦みそ麦多くは甘口九州、四国、中国委員会によると熟成は比較的短く、淡色または赤。マルコメは辛口のものも挙げています。

西京白みそ

西京白みそは、文化庁の「100年フード」に2022年度に認定されています(伝統部門、京都府味噌工業協同組合)。データベースの紹介文にはこうあります。

「米麹を大豆の約2倍使用し」 — 文化庁 100年フード「西京白みそ」

塩分は約5%、発酵期間は短いとされています(上の成分表とは別のデータです)。農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」は、京都の白みそは熟成が1週間から10日で、京雑煮や田楽、漬物、柏餅などの和菓子に使われるとしています。塩分の低さには代償もあります。

「塩の比率が低いため、他地域の味噌よりも日持ちはしない。」 — 農林水産省 にっぽん伝統食図鑑「白味噌」

八丁味噌

愛知県のウェブサイトに掲載されている、岡崎市のカクキュー(合資会社八丁味噌)の事例資料によると、原料は大豆と塩だけです。大きな杉桶に仕込み、川石を円すい状に積み上げて重しにし、約二夏二冬かけて熟成させます。

九州の麦みそ

マルコメによると、麦みそは全国生産量の3〜4%ほどで、九州、四国、中国地方に集中しています。食文化研究者の宇都宮由佳氏は、農畜産業振興機構(alic)の記事で、九州は麦みその地域で、麦みそは米みそより甘く塩分が少ないと述べ、九州の甘い味覚の背景のひとつとして挙げています。くわしくは九州の甘い醤油を、醤油の地域差については日本の醤油は一種類ではないをご覧ください。

アメリカの棚の「white miso」

上の日本の資料で「白みそ」といえば、京都や関西、瀬戸内の、甘く淡い色の低塩のみそです。ところがアメリカの店頭では、同じ言葉が別のものを指すことがあります。日本のメーカー2社の米国向け商品ページを見てみました。

  • ひかり味噌「Organic White Miso」 は、自らを「有機の米と大豆で作った伝統的な信州風みそ」と説明しています(英語の原文を訳したもの)。表示されたナトリウムは大さじ1(18g)あたり820mg、100gあたりに直すと約4,560mgです。成分表の淡色辛みそ(4,900mg)に近く、甘みそ(2,400mg)のほぼ2倍です。
  • ひかり味噌「Shinshu Miso White」 は英語で「mildly sweet and light-colored(ほどよく甘く淡色)」と書かれています。同じ会社が日本では信州みそを「辛口」と書いています。
  • Marukome USA「White Organic Miso」(見つかったページはアメリカ製の業務用22ポンド入り)は「light brown」「mild and smooth」と説明されています。どの地域のみそかは書かれておらず、ナトリウム表示も何あたりの量かがはっきりしないため、ここでは数値を使っていません。

少なくともひかり味噌の商品では、「white miso」は日本でいう辛口の淡色米みそ(信州系)で、甘い西京みそではありません。すべてのブランドを調べたわけではありません。英語の日本料理サイト Chef JA Cooks も、日常使いの「信州風」白みそと、より甘い西京系を分けて説明しています。

つまり、英語のレシピが「white miso」と書いていても、書き手が甘い白みそを想定したのか、信州みそを想定したのかは文面からはわかりません。甘い白みそのつもりなら、ラベルの「西京」「甘」の文字か、ナトリウムの値で見分けるしかありません。

味噌汁を沸騰させない理由

英語圏では「みそを煮立てるな」という注意はよく見かけますが、理由はまちまちです。2024年の Tasting Table の記事は、料理書の著者の「沸騰させると苦くなる」という言葉を紹介し、「善玉菌」にも触れています。この記事では健康面には立ち入りません。今回見つけた日本の資料が問題にしているのは、風味と香りです。

ひかり味噌の基本の作り方では、火を止め、沸騰がおさまってからみそを溶き入れ、沸騰させずに温め直します。

「風味が落ちるので決して沸騰させないでください。」 — ひかり味噌「教えて!だしと味噌汁のキホン」

目安は「煮えばな」、沸騰する直前の、香りと風味がいちばんよい瞬間です。

実験による裏付けもあります。岩手大学教育学部の菅原悦子氏と保坂由貴子氏は、20%のみそ懸濁液を加熱して香りを分析しました(日本家政学会誌、2009年)。予備試験では60、70、80、98℃で15分または30分加熱しています。15分加熱では、甘い香りの成分は70℃までは増えましたが、

「80℃以上では未加熱味噌懸濁液の香気はかなり消失し」 — 菅原・保坂、日本家政学会誌 60(5)、2009年

同じ15分の試験で、98℃ではもとの香りはほとんど感じられませんでした。98℃で30分加熱すると主要な香気成分が大きく減り、酸っぱい、刺激のあるにおいが出ました。著者らは、98℃で30分は実際の調理条件とはかけ離れていること、揮発しやすい成分は今回の方法では追えなかったことを断っています。

当サイトの読み方では、この研究が示すのは、80℃以上で15分以上という長く高温の加熱で香りが失われることです。短時間の沸騰でどれだけ失われるかは測っておらず、「沸騰直前」と「沸騰」の違いも区別できません。(官能評価では、家庭科の教科書で最も一般的な、みそを入れてひと煮立ちさせたら火を止める方法を使っています。)ひかり味噌の「火を止めてから溶き、煮えばなで止める」は、その慎重な側に立った手順です。

豆腐とわかめの味噌汁(2人分)

ひかり味噌が公開している基本の作り方をもとにしています。当サイトでは試作していません。

材料

作り方

  1. わかめはさっと洗い、水に2〜3分つけて戻し、約3cm幅に切ります。豆腐は1.5cm角に切り、長ねぎは薄い小口切りにします。
  2. 鍋でだしを温め、豆腐とわかめを入れて煮立てます。
  3. 具が温まったら火を止めます。
  4. 沸騰がおさまったらみそを溶き入れ、沸騰させないように再び火にかけます。
  5. 煮えばなで長ねぎを入れ、ひと混ぜして火を止めます。

1人分はだし200mLにみそ大さじ1で、みそ健康づくり委員会は1杯分のみそを約15gとしています。日本とアメリカの大さじはほぼ同じ大きさです(アメリカの台所で日本のレシピを作る)。上の表のとおり、同じ量でも甘い白みそなら塩分は約半分なので、味をみて加減してください。

みその保存

  • 開封前も後も、直射日光を避けて涼しいところに。 冷蔵庫でもかまわないとひかり味噌は書いています。
  • 空気に触れさせない。 みそ健康づくり委員会は、開封後は表面にラップを密着させて冷蔵することを勧め、冷凍がいちばんよいとしています。
  • 色は濃くなっていく。 ひかり味噌によるとメイラード反応でゆっくり色が濃くなり、委員会によると暑い時期ほど早く進みます。
  • 白い粒は、大豆のたんぱく質が分解してできるアミノ酸、チロシンの結晶だとひかり味噌は説明しています。
  • 京都の白みそは日持ちしにくい。 塩分が低いためだと農林水産省の図鑑は書いています。

関連記事:味噌汁はスプーンで飲まないでは、英語圏に向けて味噌汁の出し方、食べ方、具を紹介しています。

よくある質問

英語のレシピの「white miso」には何を使えばいいですか。 文面だけでは判断できません。調べたひかり味噌の米国向け「white miso」は信州系で、ナトリウムは淡色辛みそに近い値でした。甘い白みそを想定したレシピなら、ラベルの「西京」「甘」の文字か、ナトリウムの値で選ぶのが確実です。

海外ではみそはどう分類されていますか。 英語圏のレシピは、たいてい「white miso」「red miso」と色で呼び分けます。日本の資料は麹(米・麦・豆・調合)と甘口・辛口でも分け、色はそのひとつの手がかりにすぎません。

色の濃いみそほど塩辛いのですか。 そうとは限りません。食品成分表では、赤系の豆みその食塩相当量は100gあたり10.9gで、淡色辛みその12.4gより少なくなっています。

味噌汁を沸騰させてはいけない根拠はありますか。 ひかり味噌は風味が落ちるとして、みそを入れたら沸騰させないよう書いています。2009年の岩手大学の研究では、80℃以上で15分加熱すると香りの多くが失われました。ただし短時間の沸騰は試験していません。

この記事の調べ方

日本語の資料をもとにしています。農林水産省のみそJAS制定資料と「にっぽん伝統食図鑑」、文化庁の100年フードのデータベース、文部科学省の食品成分データベース、みそ健康づくり委員会のQ&A冊子、愛知県のウェブサイトに掲載された八丁味噌メーカーの事例資料、マルコメとひかり味噌のページ、そして加熱とみその香りについての2009年の査読論文です。アメリカの商品については、2026年10月時点のひかり味噌とMarukome USAの米国向けサイトを見ました。表示は変わることがあるので、手元の商品で確かめてください。日本語資料からの引用は短くとどめています。味噌汁の作り方はひかり味噌の公開レシピにもとづくもので、当サイトはこれらのみそを試食・試作していません。

参考資料

日本語の一次資料:

アメリカの商品ページ:

英語圏の例:


調味料の基本については日本の醤油は一種類ではない、だしは「フィッシュストック」ではない、英語の日本料理レシピは何を間違えているのかもどうぞ。

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