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英語の「light soy sauce」は3種類ある:うすくち・中国の生抽・減塩

英語圏で「light soy sauce」と書かれたら、うすくち、中国の生抽、減塩しょうゆのどれかです。色が薄いうすくちはむしろ塩分が高め。JASの5分類と公的な成分表で、英語圏の混乱を確かめます。

小皿に入った5種類のしょうゆが一列に並んでいる。淡い金色のしろ、琥珀色のうすくち、赤褐色のこいくち、濃い色のたまり、ほぼ黒に近い再仕込み。

英語のレシピは、たいてい「soy sauce」としか書きません。読む人は冷蔵庫にある瓶を手に取ります。中国料理のレシピになると「light soy sauce」と「dark soy sauce」が出てきて、英語で読むかぎり、日本のうすくちとこいくちの話に見えます。けれども、これは別の話です。

英語圏でとくに混乱を呼んでいるのが、うすくちの訳語として定着した「light soy sauce」です。うすくちが薄いのは色で、塩分ではありません。文部科学省の食品成分表では、重さあたりの塩分は5種類のなかでうすくちがいちばん高くなっています。

要点

  • JASの分類は5種類:こいくち、うすくち、たまり、再仕込み、しろ。出荷量の約84%はこいくちです。
  • うすくちは色が薄く、塩分は高め。 しょうゆ業界によると、こいくちより食塩が約10%多く、国の食品成分表の数字から計算しても同じになります。
  • 中国の「light/dark」は別の体系です。 中国料理のレシピの「light soy sauce」は、ふだん使いの生抽のことで、うすくちではありません。
  • 減塩しょうゆは独立した表示区分です(日本では「減塩」「うす塩」、アメリカでは「less sodium」)。塩分は色ではなく、栄養成分表示で確かめます。

JASの5分類と、塩分が出てこない定義

しょうゆの日本農林規格は JAS 1703(2021年改正)です。定義を分けているのは、こうじに使う大豆と小麦の割合、色の濃化を抑えるかどうか、再仕込みでは食塩水ではなくしょうゆで仕込むことです。どの定義にも、塩分は出てきません。 英語の「light」は塩分控えめとも読めますが、規格が分けているのは色です。

種類こうじの原料(JAS)特徴主な地域全国でのおよその割合
こいくち大豆にほぼ等量の小麦基本の種類全国約84%
うすくちこいくちと同じ(小麦グルテンも可)色の濃化を抑える関西で生まれた約13%
たまり大豆、または大豆に少量の小麦小麦が少ないか使わない主に中部約2%
再仕込み大豆にほぼ等量の小麦食塩水ではなくしょうゆで仕込む山口県柳井、山陰〜北九州約1%
しろ少量の大豆に小麦色の濃化を強く抑える愛知県碧南1%未満

こいくちとうすくちは、しょうゆ情報センターによる出荷量の割合です。ほかの3種類は、キッコーマンの機関誌『FOOD CULTURE』による生産量の割合です(本文ではしろは1%未満、グラフでは1%に丸めています)。どちらの資料にも年は書かれていません。

うすくちの定義を分けているのは、次の一文です。

「製造工程において色沢の濃化を抑制したもの」 — JAS 1703:2021 うすくちしょうゆの定義(3.10)

しろの定義では、これに「強く」が加わります。色の基準は番号が大きいほど淡い尺度で、うすくちの上位2等級は22番以上、しろは46番以上です。

使い分けは、しょうゆ情報センターの説明どおり、こいくちは「まさに万能調味料」、うすくちは炊き合わせや含め煮、たまりは刺身や照り焼き、佃煮、せんべい、再仕込みは刺身や冷ややっこ、しろは吸い物や茶わん蒸しです。照り焼きそのものが英語圏でどう変わったかは照り焼きは「ソース」ではないで書きました。

うすくちは「塩分も低い」わけではない

色が薄いのに塩分が高いのはなぜか。しょうゆ情報センターによると、うすくちはこいくちより約10%多い食塩で仕込みます。塩が多いと発酵と熟成がゆるやかになり、色が淡く保たれます。センターは誤解にもはっきり触れています。

「うすくちしょうゆというと、塩分も低いと思われがちですが、実際はやや高めです。」 — しょうゆ情報センター

塩分の数字は、単位の違う2つの資料にあります。重さあたりは、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂、2023年増補)です。

種類100gあたりの食塩相当量100gあたりのナトリウム
うすくち16.0g6,300mg
こいくち14.5g5,700mg
しろ14.2g5,600mg
たまり13.0g5,100mg
再仕込み12.4g4,900mg
こいくち・減塩(比較用)8.3g3,300mg

容量あたりは、しょうゆ情報センターが100mLあたりの食塩を、うすくち約18g、こいくち約16g(18%、16%と表記)としています。

成分表の16.0と、センターの18をそのまま比べないでください。一方は100gあたり、もう一方は100mLあたりで、ここでは換算していません。2つの資料が一致するのは比率です。重さで16.0 ÷ 14.5 ≈ 1.10、容量で18 ÷ 16 ≈ 1.13。どちらでも、うすくちはこいくちより約1割塩分が多くなります。重さで見ると、ほかの3種類はこいくちより低く、しろはわずかに、たまりと再仕込みははっきり低めです。

ヒガシマル醤油が2014年に公開した研究のまとめも、同じことを書いています。

「淡口醤油は濃口醤油と比べて食塩濃度が高く設定されており」

このまとめは、塩分を気にしてうすくちを避ける人がいると指摘したうえで、同社の煮魚や野菜の煮物の試験では、うすくちを使ったほうが低い塩分濃度で最も高く評価されたとしています。1社が自社の研究をまとめたもので、方法は公開されていません。その点は割り引いて読む必要があります。

名前のわかりにくさは日本でも問題になっていました。ヒガシマルの研究者による2015年の研究は、明治から昭和初期の料理書93冊を調べ、うすくちがかつて「うすしょうゆ」と呼ばれていたこと、その呼び名のあいまいさが「うすくち」への改称につながったと考えられることを示しています。

アメリカの売り場にある3つの「light」

英語で「light soy sauce」と言うと、まったく別の3つの商品を指すことがあります。

1. 日本のうすくち。 色が淡く、塩分はやや高め。ここまでの話です。

2. 中国の生抽。 中国の2つの主な種類は、こうじの配合ではなく役割で分けられています。福留奈美氏は『FOOD CULTURE』にこう書いています。

「生抽は、色が薄く、塩辛さが真っ先に感じられ、主に塩味をつけるために使われる。」 — 福留奈美、FOOD CULTURE No. 27

老抽については、とろりとして黒く、ほのかな甘みとカラメルの強い苦みがあると説明しています。調味料メーカーの李錦記(Lee Kum Kee)は英国サイトで、自社の light soy を「黄金色がかった褐色」で「漬けだれ、ドレッシング、合わせ調味料、卓上調味料に最適」と説明しています(英語の原文を訳したもの)。dark soy は「カラメルを加えて深みを出した濃い褐色」で、「主に料理に色をつけるために使う」とし、Premium Dark Soy Sauce の原材料にはカラメル色素と砂糖があります。

つまり、ふだん使いの1本は、日本ではこいくち、中国では生抽です。中国料理のレシピの「light soy sauce」は生抽を前提に書かれていて、うすくちではありません。福留氏によると、日本語では生抽を「中国濃口しょうゆ」、老抽を「中国たまりしょうゆ」と呼ぶことがあります。ただしこれは呼び名で、置き換えてよいという意味ではありません。

3. 減塩の「lite」。 アメリカでは減塩しょうゆが「light」や「lite」と呼ばれてきたことがあります。2002年の Straight Dope の掲示板には「light soy sauce(40%減塩と表示)」という書き込みがあり、アメリカのスーパーの通販サイトは、キッコーマンの減塩しょうゆを「Kikkoman Lite Soy Sauce」として載せています。キッコーマン自身が「Lite」を正式名に使ったことがあるかは、確認できませんでした。

英語の料理記事も混乱しています。2023年の Daily Meal の記事は、light soy sauce は「たいていナトリウムが少ない」と書きながら、「dark soy sauce より塩辛いことも多い」とも書いています(英語の原文を訳したもの)。一方、America’s Test Kitchen は、light soy sauce は減塩しょうゆではなく、うすくちは日本のこいくちよりナトリウムが多いと説明しています。

減塩しょうゆは別の区分

日本では:

  • 減塩:しょうゆ100gあたり食塩9g以下(ナトリウム3,550mg以下)で、所定の栄養表示が必要です。キッコーマンは食品表示法を根拠に挙げ、同じ数字は2009年の農林水産省のしょうゆ品質表示基準の改正案にもあります。割合ではなく絶対値の上限です。業界は「約半分」と説明することがあり、成分表では減塩こいくちが100gあたり8.3g、通常のこいくちが14.5gです。
  • うす塩、あさ塩、あま塩:通常品の80%以下の食塩(同じ2009年の改正案)。しょうゆ情報センターは80%以下かつ50%以上としています。大阪市保健所の解説によると、いまの栄養強調表示では「低減された旨」の表示にふつう25%の低減が必要ですが、しょうゆには20%(つまり80%以下)の特例があります。現行の基準の条文そのものは読めていないので、現時点で手に入る最良の要約として扱ってください。

英語圏から見ると、「うすくち」と「うす塩」はどちらも「usu」で始まり、まぎらわしく見えます。片方は色、片方は塩分の区分です。

アメリカでは、キッコーマンUSAの Less Sodium Soy Sauce はナトリウムが大さじ1(15mL)あたり590mgです。同社によると通常の Soy Sauce より38%少なく、その通常品の表示は15mLあたり960mgです。発酵・熟成のあとで塩分を約40%取り除いているといいます。同社のアメリカ向けしょうゆには、「usukuchi」「light color」「lite」という名前の商品はありません。

製法と等級

JASの製造方式は3つです。

  • 本醸造:もろみを発酵・熟成させたもの。
  • 混合醸造:もろみにアミノ酸液などを加えて発酵・熟成させたもの。
  • 混合:アミノ酸液などを混ぜたもの。JASはアミノ酸液を、大豆などの植物性たんぱく質を酸で分解したものと定義しています。

等級は特級・上級・標準の3つで、官能特性、色度、全窒素分(うま味のアミノ酸の目安)、食塩以外の無塩可溶性固形分(しろでは直接還元糖も)で決まります。塩分の上限を定めた等級はありません。本醸造のこいくちでは、全窒素分が特級1.50%以上、上級1.35%以上、標準1.20%以上で、しょうゆ情報センターによると1.65%以上なら「特選」と表示できます。特級は再仕込みを除くすべての種類で本醸造に限られ、再仕込みの特級だけは混合醸造も認められます。

産地

  • うすくちは関西生まれです(しょうゆ情報センター)。JALの機内誌は、ヒガシマルの研究部長の話として兵庫県たつのを挙げ、「東の濃口、西の淡口」と書いています。
  • たまりは主に中部です。宇都宮由佳氏は『FOOD CULTURE』で、伊勢湾・三河湾の周辺(愛知、岐阜、三重)をたまりの地域として紹介しています。取材した知多半島のメーカーは、生産の約80%がたまりです。たまりは愛知のひつまぶしのたれや三重の伊勢うどんにも使われます。
  • 再仕込みは山口県柳井の周辺が発祥で、山陰から北九州で古くから造られてきました。キッコーマンUSAの日本製「Double Fermented Shoyu」は、2回目の仕込みに食塩水ではなく同社の本醸造しょうゆを使うと説明しています。商品名に「再仕込み」の語はありませんが、製法は再仕込みです。
  • しろは愛知県碧南の生まれです。

九州の甘いしょうゆ

キッコーマンの研究者が地域ごとのしょうゆを比べたところ、九州は甘さが「圧倒的」で、2位の地域のほぼ2倍でした。甘さは糖類と、甘草由来のグリチルリチンの合計で測っています。レブリン酸の値からは、アミノ酸液を使った混合・混合醸造のしょうゆが、九州のほか北陸、東北、中国地方でも使われていることがわかりました。詳しくは九州の甘いしょうゆで書いています。

英語圏の人に勧めるなら

アメリカで暮らす人や、英語のレシピを読む人にどう説明するか、資料から言えることをまとめます。

  • ふだんの料理と卓上には、こいくち。 キッコーマンUSAも通常の Soy Sauce を「all-purpose seasoning(万能調味料)」と呼んでいます。
  • 日本のレシピがうすくちを指定している淡い煮物には、うすくち。 ラベルの「うすくち」「淡口」を探します。
  • 刺身やすしには、たまりか再仕込み。 茶わん蒸しや吸い物のようにごく淡い料理には、しろ。
  • 中国料理のレシピには、書かれているものを。 「light」は生抽、「dark」は老抽で、李錦記によると老抽は主に色づけ用です。
  • 塩分を減らしたいなら、「reduced sodium」「less sodium」と表示された瓶を買い、栄養成分表示(Nutrition Facts)の15mLあたりのナトリウムを比べます。色で判断しないこと。

うすくちの代わりにこいくちを使うと

キッコーマン、ヤマサ、ヒガシマルの資料のうち、私たちが確認できた範囲では、うすくちとこいくちを置き換える方法や分量の目安は見つかりませんでした。資料からわかるのは、うすくちは素材の色を生かすために造られ、こいくちより食塩が約1割多いということです。この数字から考えると、うすくちの代わりに同量のこいくちを使えば、色は濃くなり、塩分はわずかに低くなります。逆なら、色は淡く、塩分はわずかに高くなります。これは公表された数字からの推論で、メーカーの指示ではありません。なお、アメリカの大さじも約15mLで、日本の大さじ1とほぼ同じです(アメリカの台所で日本のレシピを作る)。

よくある質問

英語の「light soy sauce」は、うすくちのことですか。 場合によります。日本料理の文脈ならうすくち、中国料理のレシピなら生抽、アメリカのスーパーでは減塩しょうゆの意味で使われていることもあります。中国料理のレシピに書かれている「light soy sauce」は生抽を前提にしています。

アメリカでは、うすくちは減塩しょうゆだと思われているのですか。 そう受け取る記事があります。2023年の Daily Meal の記事は light soy sauce を「たいていナトリウムが少ない」と書いています。実際には、うすくちはこいくちより塩分が約1割多く、減塩なのは「less sodium」などと表示された商品です。キッコーマンUSAの Less Sodium は15mLあたり590mg、通常品は960mgです。

たまりしょうゆなら、小麦を避けられますか。 定義上は言えません。JASのたまりのこうじは「大豆、または大豆に少量の小麦」で、小麦は認められています。たとえばキッコーマンUSAの Tamari Soy Sauce の原材料は「Water, Soybeans, Salt, Wheat, Alcohol, Glucose」で、「Contains: Soy, Wheat」と表示されています。同社はグルテンフリーのたまりを別に売っています。グルテンを避けたい人は、1本ずつグルテンフリーの表示と原材料を確かめる必要があります。

この記事の調べ方

日本語の一次資料をもとにしています。しょうゆのJAS、文部科学省の食品成分表、しょうゆ情報センター、農林水産省と大阪市の表示に関する資料、キッコーマンとヒガシマル醤油が公開した研究です。アメリカの商品の情報は、2026年10月時点のキッコーマンUSAのサイトによります。配合や表示は変わることがあるので、手元の瓶で確かめてください。引用は短くとどめ、英語の資料は当サイトで訳しています。当サイトはこれらのしょうゆを試食・試験していません。種類の置き換えについてはメーカーの資料が見つからなかったため、公表された数字からの推論であることを明記しました。

参考資料

日本語の一次資料:

アメリカなどの商品ページ:

英語圏の記事の例:


英語圏で日本の調味料がどう誤解されているかは、英語の日本料理レシピは何を間違えているのか、「みりんの代わりに米酢」は誤り、照り焼きは「ソース」ではないもどうぞ。

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