日本ではこう食べる

アメリカ人は緑茶に砂糖とミルクを入れていた:甘くしない緑茶、甘くてもいい抹茶

アメリカのペットボトル緑茶は甘いことがあり、「無糖」がわざわざ売り文句になります。100年前のアメリカ人は日本の緑茶に砂糖とミルクを入れていました。日本で甘くしない緑茶と、甘くてもよい抹茶の境目を資料で確かめます。

木のテーブルの上に、黒っぽい横手の急須と、澄んだ黄緑色の煎茶が入った白い湯のみ2つ。

アメリカのスーパーでペットボトルの緑茶を買うと、甘いことがあります。そのためアメリカでは「unsweetened(無糖)」が、商品にわざわざ書かれる言葉になっています。伊藤園の北米向けサイトも「無糖」を前面に出しています。

日本人の旅行者が海外で甘い緑茶に驚く話はよく聞きます。ただ、アメリカで緑茶を甘くするのは新しいことではありません。20世紀初めまで、日本の緑茶の最大の輸出先はアメリカで、多くのアメリカ人はそれを砂糖とミルクを入れて飲んでいました。

一方で、日本にも甘い「緑」の飲み物はあります。抹茶ラテや、関西でいう「グリーンティー」です。日本で甘くしないのは茶葉から入れた緑茶で、抹茶は甘くても甘くなくてもかまわない。境目は「日本とアメリカ」の間ではなく、「緑茶と抹茶」の間にあります。

要点

  • アメリカでは「無糖」は表示で確かめるものです。 伊藤園は北米で「Oi Ocha unsweetened teas」と売り出しています。FDAの栄養成分表示には「Added Sugars(加えた糖)」の欄があります。
  • かつてのアメリカ人は、日本の緑茶を甘くして飲んでいました。 20世紀初めまでアメリカは日本茶の最大の輸出先で、多くは温かい緑茶に砂糖とミルクを入れていました。
  • 日本の代表的なペットボトル緑茶は無糖です。 伊藤園は「お~いお茶」を無香料・無調味とし、サントリーの伊右衛門 京都ブレンドは0kcal、炭水化物0gです。
  • 抹茶は甘くても甘くなくてもよいものです。 茶道の薄茶は抹茶と湯だけですが、砂糖入りの抹茶は1930年ごろから売られ、その甘い飲み物は「グリーンティー」と呼ばれるようになりました。緑茶とは別の言葉です。
  • 海外では「matcha」が甘い飲み物に寄っています。 飲み物に混ぜる緑の粉の名前として定着し、抹茶ラテには砂糖が入っていることが多くあります。抹茶そのものに砂糖は入っていません。

アメリカでは「無糖」が売り文句になる

伊藤園の北米向けサイトは「Oi Ocha unsweetened teas で、本物の日本の茶文化を味わって」(英語の原文を訳したもの)とうたっています。日本なら書くまでもないことが、アメリカでは商品の特徴になります。

逆の驚きもあります。東京藝術大学のサイトで運営されているお茶のプロジェクトGEICHAは、ある文章をこう始めています。

「日本人が外国に旅行すると、緑茶に砂糖が入っているのに驚くという話を聞きます。」 — GEICHA「緑茶に砂糖を入れるの?」

同じ文章の英語版は、9世紀の中国では茶に香辛料やかんきつの皮、塩を入れていたことや、ミルクティーの長い歴史にもふれています。緑茶を甘くしないのは日本の習慣であって、お茶の決まりではありません。

アメリカで買うときの見分け方は、FDAの栄養成分表示(Nutrition Facts)にある「Added Sugars」の欄です。FDAによると、加えた糖には加工中に加えられた糖(「ショ糖やブドウ糖など」)のほか、シロップ、はちみつ、濃縮果汁が含まれます。日本の無糖の緑茶のようなものを探すなら、この欄が0gで、原材料にも糖がないものを選びます。

100年前、アメリカ人は日本の緑茶に砂糖とミルクを入れていた

滋賀県の県政史料室のコラムは、はっきり書いています。

「実は20世紀初めまで、緑茶の最大の輸出先はアメリカ、次いでカナダでした。」 — 滋賀県「【コラム2】緑茶の輸出」

同じコラムによると、政府が横浜で生糸と茶の展示会を開いた1879年ごろ、輸出品の1位は生糸、2位は茶でした。その後、日本の緑茶はインドやセイロン(いまのスリランカ)の紅茶に市場を奪われ、綿糸や石炭にも抜かれて順位を下げていきます。

アメリカ側の事情は、歴史家ロバート・ヘリヤー(Robert Hellyer)の『Green with Milk and Sugar: When Japan Filled America’s Tea Cups』(コロンビア大学出版局、2021年)が描いています。プリンストン大学東アジア研究プログラムの紹介文によると、19世紀のアメリカ人は緑茶を好み、はじめは中国から、のちに日本から買いました。日本はアメリカ向けの輸出産業を築きます。アメリカ人は「特に中西部の人々」が「温かく、しばしばミルクと砂糖を入れて」飲んでいた、とあります。そして「1920年代、社会経済の流れと人種的偏見が、アメリカ人をセイロンとインドの紅茶へ向かわせた」(いずれも英語の原文を訳したもの)。

余った茶を抱えた日本の茶商は、煎茶を国内や当時の帝国各地で売り込み、煎茶は日本文化の象徴になっていきました。煎茶のこの役割は、砂糖とミルクを入れていたアメリカの客を失ったあとに育った面もある、ということになります。(当サイトが見たのは本の紹介文だけで、本文は読んでいないため、具体的な数字は引いていません。)

この古い習慣が、いまの甘いペットボトル緑茶に直接つながっていることを示す資料は見つかっていません。ただ、アメリカ人が緑茶を甘くしてきた歴史が100年以上あることは確かです。

日本の緑茶は「入れたお茶」で、甘くしない

統計にも「加糖」の区分がない

全国清涼飲料連合会の『清涼飲料水統計2025』によると、2024年の緑茶飲料の生産量は3,076,900kLで、清涼飲料全体の23,596,300kLの約13%(当サイトの計算)です。

紅茶飲料はストレート、ミルク、レモン、その他に分かれ、別に「無糖(甘味料入りを含む)」の行があります。コーヒー飲料にも「無糖ブラック(甘味料入りを含む)」があります。ところが緑茶は1つの数字だけで、加糖と無糖の区分がありません。統計は理由を書いておらず、この分野に甘い飲み物がまったくないことの証明にもなりません(後の抹茶飲料を参照)。ただ、業界が緑茶を甘さで分けていないことはわかります。

ラベルも同じです。サントリーの伊右衛門 京都ブレンドの原材料は、緑茶(国産)、大麦、玄米、国産紅茶とビタミンCで、100mL当たり0kcal、炭水化物0gです。伊藤園は「お~いお茶」を無香料・無調味とし、家庭で急須に茶葉と湯を入れて入れるのと同じ作り方だと説明しています。

伊藤園によると、同社は1984年に世界初の緑茶飲料として缶入り煎茶を完成させ、1985年2月に発売しました。「お~いお茶」の名前は1989年から。1990年には世界初とする1.5リットルのペットボトル緑茶を出し、500mLは1996年です。当時の空気を、同社の30周年資料はこう振り返っています。

「発売当時、日本では”お茶はタダで飲めるもの”、“お茶なんか”というのが常識。」 — 伊藤園「お~いお茶」30周年資料

名古屋で宇治茶と抹茶の専門店「丸竹夷」を営む成澤崇さんは2026年、東南アジアの一部で甘いペットボトル茶に戸惑う日本人について書いています。日本では緑茶、つまり煎茶や玉露は無糖の飲み物で、甘い紅茶はあまり気にならないのに甘い緑茶には違和感がある。それは、紅茶は甘くてもよいが緑茶は甘くない、という無意識の区分けのせいだという見方です。

抹茶は別のルール

「日本人は緑茶を甘くしない」という話から抜け落ちるのが、抹茶です。

伝統的な形では、抹茶も甘くしません。農林水産省の広報誌『aff』2017年の抹茶特集は、薄茶の点て方を、抹茶1杯半〜2杯、約80°Cの湯、茶筅だけで説明しています。甘みは茶碗の外から来ます。特集の茶道教室では菓子が茶より先に出され、家で薄茶を点てるときも季節の和菓子を添えるようすすめています。

ところが茶道の外では、甘い抹茶にも長い歴史があります。

甘い抹茶は「グリーンティー」として広まった

宇治の茶舗、宇治豊香薗は2025年の2本の記事でこの歴史を書いています。宇治抹茶とグラニュー糖を合わせた粉が真空缶で売り出されたのは1930年ごろ。抹茶はふつう茶筅と慣れが要りますが、砂糖のおかげで溶けやすくなり、水に混ぜるだけで飲めるようになりました。(京阪電気鉄道は、京都の一保堂の「宇治清水」を1935年とし、いまのグリーンティーの草分けと紹介しています。豊香薗は1930年の製造元の名前を挙げていないため、どちらが先かはわかりません。)

豊香薗によると、甘い抹茶飲料が広まったのは1955年ごろから1975年ごろ。家庭に冷蔵庫が普及し、冷たい飲み物が求められた時代です。1962年には大阪・梅田の阪急百貨店の地下に「グリーンティー」の売り場ができました。京都や大阪の店が取り入れて関西に根づいた理由として、豊香薗は近くに宇治の茶どころがあったことと、夏の暑さを挙げています。

名前にも意味があります。豊香薗によると、売り手は「加糖抹茶」ではなく「グリーンティー」と呼びました。カタカナの名前が新しくおしゃれに聞こえ、喫茶の飲み物に合っていたからです。関西では、グリーンティーといえば甘く冷たい抹茶飲料を指すことが多いといいます。つまり日本語では、グリーンティーと緑茶は同じ言葉ではありません。グリーンティーが何を指すかは文脈によりますが、日本語の話し手はそれを緑茶そのものとは受け取りません。緑茶は甘くしないお茶で、グリーンティーは甘い抹茶飲料に寄った言葉です。豊香薗は、これが英語話者にとっての落とし穴になると指摘しています。英語の「green tea」は煎茶も玉露も番茶も含むのに、日本語の「グリーンティー」は甘い粉の飲み物を指すようになったからです。

この名前はいまも使われています。2026年4月、日本のコカ・コーラシステムは「綾鷹カフェ ほんのりあまい抹茶グリーンティー」(440mLペットボトル)を発売しました。日本食糧新聞はその味を「やさしい甘さ」と紹介しています。甘味料の種類は記事に書かれていません。メーカーは名前の理由を説明していませんが、当サイトの見方では、甘い「緑茶」では日本の買い手に敬遠されるので「抹茶」を前に出し、カタカナの「グリーンティー」なら緑茶とは受け取られない、ということでしょう。

いまの抹茶ラテ

明治の「辻利 抹茶ラテ」(200mLの紙パック)は、原材料の先頭が砂糖です。砂糖、乳製品、デキストリン、抹茶、食用油脂、食塩と続き、そのあとに添加物。1本200mLで90kcal、炭水化物17.5gです。明治は味をこう説明しています。

「京都宇治の老舗「辻󠄀利」の抹茶を使用し、抹茶とミルクのまろやかな味わいでほんのりとした甘みに仕立てました。」 — 明治 商品ページ

アメリカのスターバックスは、かつて抹茶パウダーそのものが加糖でした。2024年に料理メディアのTasting Tableが「スターバックスの抹茶は最初から甘くしてある」と報じています。スターバックスは2025年1月に無糖の抹茶パウダーを導入し、「シロップの量で甘さを調整しやすくなった」と説明しています(いずれも英語の原文を訳したもの)。いずれにしても、甘い抹茶ラテは日本の会社も作っているので、英語圏での取り違えのしるしではありません。取り違えになるのは、甘い煎茶のほうです。

「matcha」が海を渡ると

甘さそのものは外国のものではありません。変わったのは、言葉が指すものです。抹茶自体に砂糖は入っていません。ところが豊香薗によると、海外では「matcha」が飲み物に混ぜる緑の粉の名前として定着し、抹茶ラテには砂糖が入っていることが多く、無糖の抹茶とは別物になりうるといいます。

言葉が輸出されると、指すものは変わっていきます。 — 宇治豊香薗、2025年7月

日本では逆の流れもあるようです。成澤さんは、日本の抹茶ラテは甘いものが中心だったが、抹茶そのものの香りや苦みを求めて甘さ控えめで飲む人が増えていると書いています。甘い抹茶ラテから、砂糖を減らし、やがて無糖の抹茶や薄茶へ、という道をたどる人が多いそうです。

境目はどこか

飲み物日本で甘くするか資料が示すこと
家で入れる煎茶、番茶、ほうじ茶しない静岡県の入れ方は茶葉と湯だけ
代表的なペットボトル緑茶しない伊藤園:無香料・無調味。伊右衛門 京都ブレンド:100mL当たり0kcal、炭水化物0g
ペットボトル紅茶どちらもある全国清涼飲料連合会は「無糖」を別に集計
茶道の薄茶しない(菓子のあとに飲む)農林水産省『aff』:抹茶と湯だけ、菓子が先
紙パックの抹茶ラテする明治:原材料の先頭が砂糖
甘い抹茶飲料(グリーンティー)する豊香薗:1930年ごろから砂糖入り抹茶。日本食糧新聞(2026年):綾鷹カフェは「やさしい甘さ」
アメリカのペットボトル緑茶銘柄による伊藤園は「unsweetened」と表示して販売。Added Sugarsの欄で確認

実用的にまとめると、日本では茶葉から入れた緑茶は甘くしません。抹茶はどちらもあり、茶碗では甘くせず、ラテや飲料、菓子では甘くします。アメリカのカフェの抹茶ラテが甘いのは、日本と同じです。日本の習慣から外れるのは、甘い煎茶や、砂糖入りの「ふつうの緑茶」のほうです。

静岡県の煎茶の入れ方

参考までに、静岡県がお茶振興課を通じて公開している入れ方を載せます。標準の表は次のとおりです。

お茶人数茶葉湯の温度浸出時間
煎茶(普通)5人10g90°C1分
煎茶(上級)3人6g70°C2分
番茶・ほうじ茶5人15g熱湯(100°C)30秒
玉露(普通)3人10g60°C2分
玉露(上級)3人10g50°C2分30秒

なお、このページは本文と表が一致しない箇所があります。本文は煎茶を一律に約60秒(深蒸しは30秒)としていますが、表は普通1分、上級2分です。玉露も本文は約2分、表の上級は2分30秒。両方で一致するのは普通煎茶だけなので、下の作り方はそれにしています。

読み取れる傾向は、上級の茶ほど湯の温度を低くすることです。番茶やほうじ茶は熱湯で短く、上級煎茶や玉露はぬるめの湯で長めに浸します。

ふだんの煎茶(5人分)

静岡県の公開している方法をもとに、その順番と分量どおりにしています。当サイトの台所では試していません。

用意するもの

  • 煎茶 10g(静岡県によると家庭用の大さじ約2杯)
  • 沸騰させた湯 約450mL(1人90mL)
  • 急須、小さめの湯のみ5つ

入れ方

  1. 湯のみで湯を冷ます。 湯のみの8分目まで湯を注いで冷まします。普通煎茶なら約90°C。(上級煎茶は約70°C、1人60mLです。)
  2. 急須に茶葉を入れる。 人数が少ないときは茶葉をやや多めに、とありますが、量は書かれていません。
  3. 湯のみの湯を急須に注ぎ、約60秒おく(深蒸し煎茶は約30秒)。
  4. 均等につぐ。 濃さがそろうよう少しずつ順につぎ分け、最後の一滴まで出しきります。

2煎目は湯を注いで10秒ほどでつぎます。

よくある質問

海外では、緑茶に砂糖を入れるのがふつうなのですか。 国や銘柄によります。アメリカでは甘いペットボトル緑茶もあり、「unsweetened(無糖)」がわざわざ表示される言葉になっています。買うときはFDAの栄養成分表示の「Added Sugars」の欄が0gかどうかで確かめられます。

アメリカ人はなぜ緑茶を甘くするのですか。 十分に説明した資料は見つかっていませんが、習慣は古いものです。20世紀初めまでアメリカは日本の緑茶の最大の市場で、ヘリヤーの本の紹介文によると、多くのアメリカ人は温かい緑茶にミルクと砂糖を入れて飲み、1920年代に紅茶へ移っていきました。

海外の「matcha」は日本の抹茶と同じものですか。 粉そのものは抹茶ですが、言葉の指すものがずれています。豊香薗によると、海外では「matcha」が飲み物に混ぜる緑の粉の名前として定着し、抹茶ラテには砂糖が入っていることが多いといいます。

この記事の調べ方

日本語の資料として、伊藤園の「お~いお茶」30周年資料とブランドページ、サントリーの商品情報、明治の商品ページ、農林水産省『aff』2017年の抹茶特集、日本食糧新聞の綾鷹カフェの記事、京阪電気鉄道の一保堂「宇治清水」の紹介、宇治豊香薗の記事2本、名古屋の茶舗「丸竹夷」店主のコラム、全国清涼飲料連合会『清涼飲料水統計2025』、静岡県のお茶の入れ方、滋賀県県政史料室のコラム、東京藝術大学のサイトのGEICHAを使いました。アメリカ側は、伊藤園の北米向けサイト、FDA、プリンストン大学によるヘリヤーの本の紹介、スターバックスのニュースルーム、Tasting Tableによっています。日本語資料からの引用は原文のまま、短くとどめています。入れ方は静岡県の方法をもとにしたもので、当サイトの台所では試していません。アメリカのペットボトル緑茶のいくつかは公式の原材料ページを開けなかったため、糖の量は銘柄を挙げて書いていません。

参考資料

メーカー:

茶舗と企業:

業界紙:

業界統計:

国と自治体:

大学と歴史:

アメリカ政府と英語の例:

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