安全と表示

アメリカの「Use-By」は安全の期限ではない:日米の期限表示と豆腐

英語では消費期限も賞味期限も「expiration date」です。アメリカの連邦規則が日付を義務づけるのは乳児用調製乳だけ。日米の期限表示の違いを、豆腐と卵を例に公的資料で確かめます。

白い冷蔵庫の棚に置かれた、水を張ったプラスチック容器入りの豆腐2パック。ふたには何も書かれていない。

英語では、消費期限も賞味期限もたいてい「expiration date」の一語にまとめられます。日本の店で売られる豆腐はふつう数日しかもちませんが、アメリカのスーパーには、製造から1年以上先の日付が入った常温保存の絹ごし豆腐が並んでいます。

しかもアメリカの連邦規則で日付の表示が義務づけられているのは、乳児用調製乳の1品目だけです。それ以外はメーカーの任意で、品質の目安という扱いです。日本の英訳で消費期限にあたる「use-by」も、アメリカでは安全の期限ではありません。同じ英語が、日米で違う意味を持っています。

要点

  • 日本は、安全の期限である消費期限と、品質の期限である賞味期限の二本立てです。消費者庁は、消費期限を過ぎたら食べないほうがよく、賞味期限は過ぎても品質が保たれていることがあるとしています。
  • アメリカは、米農務省食品安全検査局(FSIS)によると「乳児用調製乳を除き、連邦規則は日付の表示を求めていない」。ほかの表示はすべて任意で、FSIS はどれも安全の期限ではないとしています。
  • 豆腐は、業界の衛生管理の手引書で、通常の冷蔵品が約3日、充填豆腐が約7日です。常温保存の無菌充填豆腐が日本で認められたのは2018年7月13日からです。

日本の二つの表示と、「約5日」の出どころ

二つの定義は食品表示基準にあり、消費者庁の「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(2025年3月版)にもそのまま載っています。どちらかの表示が必要ですが、砂糖、食塩、アイスクリーム、酒類など、表示を省略できる品目もあります。消費者庁の解説資料は、弁当、サンドイッチ、惣菜を消費期限の例に、菓子、カップめん、缶詰を賞味期限の例に挙げ、賞味期限についてこう添えています。

「当該期限を超えた場合でも、これらの品質が保持されていることがある。」 — 消費者庁「消費期限と賞味期限」

英語圏の解説には、消費期限は「おおむね5日以内」の食品につける、と書くものがあります。ある旅行ガイドは「製造からおよそ5日以内」としています。この数字には出どころがありますが、2008年に正式に廃止されたものです。

消費者庁の資料「食品の期限表示制度の変遷等」(2024年5月)によると、1995年2月の厚生省の通知が、消費期限の食品を、製造日を含めておおむね5日以内に品質が劣化するものと説明していました。1993年の国の検討会が、製造年月日より品質保持の期限を示すほうが役に立つとまとめ、1994年に切り替えが決まり、1995年の基準から期限表示への移行が始まって、1997年に完全に施行されています。

2025年3月のガイドラインは、さらにはっきり書いています。1995年に厚生省と農林水産省の通知で示された5日という区分は法令上の定義から導かれるものではなく、両省が2008年に削除しており、消費者庁としても推奨しない、という趣旨です。期限は事業者、つまり国産品なら製造者、加工者、販売者が、食品の特性に応じた客観的な指標と基準で決めます。決めた期限には1未満の「安全係数」をかけるか、一定の時間を差し引いて短めにするのがふつうだ、ともあります。「約5日」は、廃止された1995年の目安で、法令上の線引きだったこともありません。

なお、賞味期限が製造から3か月を超える場合は、年月だけの表示が認められています。

アメリカ:義務は乳児用調製乳の1品目だけ

FSIS の「Food Product Dating」のページは率直です。「乳児用調製乳を除き、連邦規則は日付の表示を求めていない」(英語の原文を訳したもの、以下同じ)。乳児用調製乳には「Use-By」の表示が義務で、FSIS は「Use-By の日付を過ぎた乳児用調製乳は買わない、使わない」よう呼びかけています。

ほかはすべて任意です。FSIS は、よく使われる表現を次のように定義しています。

表示FSIS の説明安全の期限か
Best if Used By / Before「風味や品質がもっともよい時期」「購入や安全の期限ではない」
Use-By「品質が最良のうちに使うことが勧められる最終日」安全の期限ではない(乳児用調製乳を除く)
Sell-By「在庫管理のため、店がいつまで陳列するかを示す」「安全の期限ではない」
Freeze-By「品質を保つため、いつまでに冷凍すべきか」「購入や安全の期限ではない」

FSIS は、傷みやすい食品も日付のあと品質は落ちるかもしれないが「適切に扱われていれば安全なはず」とし、日付をつけるメーカーや小売には「Best if Used By」を使うよう勧めています。2024年12月には、米農務省(USDA)と米食品医薬品局(FDA)が期限表示について共同で意見募集を行い、この推奨をくり返しました。FDA の発表は、「Sell By」や「Use By」などほかの表現も「真実で誤解を招かない限り」連邦規則は「禁止していない」としています。卵については、州法に独自の日付の決まりがある場合があると FSIS は書いています。

ここで言葉が真正面からぶつかります。消費者庁の英訳では、消費期限は「use-by」で、安全の表示です。アメリカの「Use-By」は、FSIS の定義では乳児用調製乳以外は品質の期限です。同じ英語が、別の意味で使われています。

豆腐:日本の期限が短い理由

通常の豆腐は冷蔵で約3日

日本豆腐協会と全国豆腐連合会の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な豆腐類製造事業者向け)」(第2版、2020年、厚生労働省のサイトに掲載)は、製品の表で、絹ごし、木綿、寄せ豆腐の「消費期限(賞味期限)」を約3日、充填豆腐を約7日としています。いずれも10°C以下の冷蔵です。

これは業界の手引書にある目安で、法令の上限ではありません。期限は各メーカーが決めます。見出しが「消費期限(賞味期限)」となっているため、個々の商品がどちらの表示か、日本のメーカーが一般にどちらを使っているかは、今回見た資料からはわかりません。

充填豆腐は容器に詰めてから加熱します。同じ手引書は90°Cで40分、またはそれと同等の加熱を挙げており、期限が長めなのは、これが一因と考えられます。(充填豆腐と絹ごしの違いは絹ごし豆腐は「軽く水切りした豆腐」ではないで書きました。)

常温保存の豆腐は2018年7月13日から

2018年まで、日本の規格基準は豆腐の冷蔵を求めていました。改正を知らせた厚生労働省の通知には、こうあります。

「これまで豆腐は冷蔵等しなければならないと規定していたが、」 — 厚生労働省 生食発0713第9号(2018年7月13日)

この通知は、常温で保存できることが確認された無菌充填豆腐について、新しい基準を設けました。常温保存で売る豆腐は、その中で増殖しうる微生物が陰性であることが条件で、製造には殺菌または除菌の方法が定められています。施行は公布の日、2018年7月13日です。森永乳業の発表によると、消費者庁は2018年9月21日に表示基準を改正しました。

変わったのは保存の決まりです。日持ちする豆腐自体はすでにありました。森永乳業によると、保存料を使わない絹ごしを1989年から宅配で販売しており、「森永とうふ」は冷蔵での日持ちをうたう商品だと説明しています。常温版について同社は、食品と容器を別々に殺菌し、無菌で充填するとしています。食品安全委員会は2018年3月の機関誌の特集で、無菌充填豆腐を、連続流通式の殺菌機で加熱した豆乳に、殺菌・ろ過した凝固剤を加え、無菌的に充填・密封したものと説明し、条件として120°C・4分と同等以上の加熱殺菌を挙げています。そして、冷蔵から常温保存に変えてもリスクは変わらないと考えられる、と結論づけました。

アメリカの売り場の事情がわかる一文も、同じ特集にあります。

「……国内流通以外では、常温保存可能な食品として、欧州等諸外国への輸出や米国での現地製造が行われています。」 — 食品安全委員会『食品安全』第54号(2018年3月)

国内では冷蔵が義務だった種類の豆腐が、海外ではすでに常温の食品として売られていたわけです。森永乳業の常温保存の絹ごしが国内で宅配発売されたのは2019年1月22日で、賞味期限は常温で製造から195日(約6.4か月)です。

アメリカの豆腐:低温殺菌、水入り、無菌充填

  • Mori-Nu は、森永乳業の100%子会社である米 Morinaga Nutritional Foods の商品です。公式サイトによると、絹ごし豆腐はすべて「オレゴン州ポートランド近郊」で作られています。FAQ では、「best used by」の日付は「製造日から1年以上先」で、開封までは冷蔵不要としています。開封後は密閉容器で冷蔵し「長くても2日以内に」使うこと(別の箇所では、残った豆腐は3日を過ぎたら食べないこと)としており、「best used by」の日付を過ぎてから食べることは勧めていません。
  • House Foods America は水入りの豆腐を売っており、豆腐は「製造工程で低温殺菌されているので、容器から出してそのまま食べられる」とし、「冷蔵で、水に浸した状態で」出荷すると書いています。低温殺菌の方法によって「保存料を使わずに長い賞味期間」が得られるとも説明しています。開封後は「2〜3日以内に」食べるようにとしていますが、未開封で何日もつかは FAQ にありません。

Mori-Nu の「1年以上」と、森永乳業の国内向け195日は、別の商品で、別の決まりの下にあります。どちらの資料も、この差の理由は説明していません。

これらの資料から見える差は、製法と包装(生、低温殺菌、無菌充填)の違いに沿ったもので、どちらかの国の豆腐がもろいとか、保存料が多いといった話ではありません。開封後については、ここで挙げたアメリカの2社とも2〜3日という短い目安です。

卵:日本の賞味期限は「生で食べられる期限」

卵は、日本の賞味期限が特別な意味を持つ例です。

「卵の賞味期限は生で食べられる期限を示したもの。」 — 食品安全委員会 キッズボックス(2022年7月)

鶏卵公正取引協議会の表示ルールでは、この期限は産卵から21日以内が上限です。アメリカでは、FSIS によると USDA の格付けを受けた卵の日付は任意です。日付をつける場合、「Sell-By」「EXP」は箱詰めから30日以内、「Use By」「Best if Used Before」は箱詰め日を含めて45日以内とされています。FSIS は、生や半熟の卵を食べないよう、すべての人に勧めています。日本の GP センターの決まりも含めた詳しい話は生卵と卵かけご飯にまとめました。

日米を並べると

日本アメリカ(連邦)
日付の表示は義務か食品表示基準により、ほとんどの容器包装入り加工食品で消費期限か賞味期限が必要。砂糖、食塩、アイスクリーム、チューインガム、酒類などは省略可乳児用調製乳(「Use-By」)のみ
安全の表示消費期限:過ぎたら「食べないほうがよい」なし(乳児用調製乳を除く)
品質の表示賞味期限:過ぎても品質が保たれていることがある「Best if Used By」(推奨)、「Use By」「Sell By」「Freeze By」。すべて任意
期限を決めるのは製造者、加工者、販売者。客観的な指標から決め、安全係数で短めにするのがふつう日付をつける場合はメーカーか小売
通常の冷蔵豆腐約3日(業界の手引書)、10°C以下銘柄による。House Foods は低温殺菌・水入り
常温保存の豆腐2018年7月13日から。森永乳業の商品は195日Mori-Nu:製造から「1年以上」
卵賞味期限=生で食べられる期間。産卵から21日以内USDA 格付け卵でも日付は任意。つける場合は箱詰めから30日または45日

よくある質問

アメリカの食品には消費期限がないのですか。 連邦の規則で日付の表示が義務なのは乳児用調製乳だけです。ほかの食品の「Best if Used By」「Use By」「Sell By」などはメーカーや小売の任意の表示で、FSIS はいずれも安全の期限ではないとしています。卵などについては州の決まりがある場合があります。

アメリカの「Use By」は、日本の消費期限と同じ意味ですか。 違います。消費者庁は消費期限の英訳に「use-by」を使っていますが、FSIS の定義では、アメリカの「Use-By」は乳児用調製乳を除いて品質が最良の時期の目安で、安全の期限ではありません。

アメリカの豆腐はなぜ1年以上もつのですか。 Mori-Nu の豆腐は、開封まで冷蔵のいらない常温保存の商品です。日本では、無菌充填豆腐の常温保存は2018年7月13日まで認められていませんでしたが、食品安全委員会によると、それ以前から輸出やアメリカでの現地製造が行われていました。資料から見える日米の差は製法と包装の違いに沿ったもので、保存料の多さを示すものではありません。

この記事の調べ方

主に日本語の公的資料によっています。消費者庁の期限表示のガイドラインと制度の変遷の資料、2018年の豆腐の規格基準に関する厚生労働省の通知、無菌充填豆腐についての食品安全委員会の特集、豆腐業界の HACCP の手引書、常温保存の豆腐についての森永乳業の発表です。アメリカの規則は USDA の FSIS と FDA、アメリカの商品については House Foods と Mori-Nu の公式 FAQ によりました。英語の資料からの引用は当サイトで訳しています。当サイトで保存試験をしたものはなく、保存の目安はそれを示した機関やメーカーの説明として書いています。

参考資料

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