英語圏ではいまも「長寿の島」:沖縄の平均寿命、統計で見る実際
英語圏の記事は、沖縄を「ブルーゾーン」の長寿の島として現在形で紹介し続けています。2020年の都道府県別生命表では男性43位、女性16位。厚生労働省と沖縄県の資料で確かめます。

英語で「Okinawa diet(沖縄の食事)」と検索すると、沖縄を長寿の地として現在形で紹介するページがたくさん出てきます。紫いもなどの定番食材を並べ、沖縄の人は肉をほとんど食べないと書き、沖縄が「ブルーゾーン」のひとつであることを根拠に挙げます。
日本の統計は、もっと込み入った話をしています。沖縄の女性は1975年から2005年まで平均寿命が都道府県で1位、男性も1980年と1985年に1位でした。ところが厚生労働省の令和2年(2020年)都道府県別生命表では、出生時の平均寿命で男性は47都道府県中43位、女性は16位です。沖縄県自身も、計画のなかでこれを立て直すべき課題としています。
昔の研究が間違っていたわけではなく、沖縄の高齢者はいまも指標によっては際立っています。ただ、伝統的な食事と記録的な平均寿命はある世代についての話で、広く読まれている英語のページのいくつかは、それをいまの沖縄として描いています。この記事は人口統計を紹介するもので、食事や健康についての助言ではありません。
要点
- 下がったのは順位で、平均寿命ではありません。 沖縄の平均寿命は延びています。ほかの県がもっと速く延びました。
- 先に落ちたのは男性です。 1995年の4位から2000年に26位へ。県はこれを「26ショック」と呼んでいます。2020年は43位でした。
- 女性はもっと長く持ちこたえました。 2005年まで1位、2010年に3位、2015年に7位、2020年に16位です。
- 高齢の沖縄県民は、いまも首位かそれに近い位置にいます。 2020年、65歳と75歳の平均余命は女性が全国1位、75歳の男性は2位でした。
- 県が重視しているのは働く世代の健康です。 20〜64歳の死亡率の高さ、肥満、多量の飲酒、少ない歩数、野菜不足を挙げています。
英語圏のページが書いていること
VegNews は、2026年1月の沖縄の食材についての記事で、沖縄は「100歳以上の人の割合が世界で最も高い地域のひとつとして知られる」とし、「沖縄はブルーゾーンに指定されていて、つまり長寿の地だ」と書いています。さらに「実際、彼らの食事のうち肉は1パーセントに満たない」と続けます(いずれも英語の原文を訳したもの)。肉の数字には年も出典も書かれておらず、沖縄の順位が下がったことにも触れていません。
「ブルーゾーン」のブランドを掲げる団体 Blue Zones は、沖縄の食事についてのページで、沖縄は「平均寿命が世界で最も高い水準にある」とし、「このように食べる沖縄の人は、いちばん長生きするだけでなく、老年まで非常に健康だ」と書いています。同じページは、食事そのものについては過去形を使い(「肉は1パーセント未満だった」)、数字の年代は示していません。
公平のために言えば、同じページには「ファストフードと西洋式の食べ方が島にも入ってきた」「若い世代は、もはや伝統的な沖縄の食べ方の恩恵を受けていない」とも書かれています(英語の原文を訳したもの)。それでも、「こう食べてきた高齢の沖縄の人」と「いまの沖縄」の違いは、引用が重なるうちに抜け落ちやすく、VegNews の記事がその例です。(この記事は日本国内の統計だけを扱い、世界との比較はしていません。)
生命表が示すこと
厚生労働省は都道府県別生命表を公表しており、2020年版は2022年12月に出ました。年次推移の表に各回の沖縄の順位があり、沖縄県も医療の現状をまとめた章でこれを載せています。
| 年 | 沖縄・男性(47都道府県中) | 沖縄・女性(47都道府県中) |
|---|---|---|
| 1975 | 10位 | 1位 |
| 1980 | 1位 | 1位 |
| 1985 | 1位 | 1位 |
| 1990 | 5位 | 1位 |
| 1995 | 4位 | 1位 |
| 2000 | 26位 | 1位 |
| 2005 | 25位 | 1位 |
| 2010 | 30位 | 3位 |
| 2015 | 36位 | 7位 |
| 2020 | 43位 | 16位 |
出典:厚生労働省 都道府県別生命表(令和2年版の年次推移表2-1・2-2)、沖縄県の資料にも転載。厚生労働省は、1965年の数値には1972年に復帰した沖縄が含まれないと注記しています。
県は男性の低下をこう書いています。
「男性は平成2年(1990 年)に第5位となった後、平成 12 年(2000 年)に初めて全国平均を下回り第 26 位に急落し、令和 2 年(2020 年)は第 43 位となっています。」 — 沖縄県「沖縄県の医療の現状」第2章
女性についても同じように書いています。
「女性は平成 17 年(2005 年)まで全国第1位でしたが、平成 22 年(2010 年)に順位を落とし第3位となり令和2年(2020 年)は第 16 位となっています。」 — 沖縄県、同じ章
2024年の県の健康づくりの会議資料は、二つの大きな落ち込みに名前をつけています。男性が26位になった2000年の「26ショック」と、男性が30位、女性が3位になった2010年の「330ショック」です。厚生労働省の年次推移表も2010年の男性を30位としています。(医療の現状の章の表は29位としており、誤りとみられます。)
2020年の数字
| 出生時の平均寿命(2020年) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 沖縄 | 80.73年(43位) | 87.88年(16位) |
| 全国 | 81.49年 | 87.60年 |
| 最も高い県 | 滋賀 82.73年 | 岡山 88.29年 |
| 最も低い県 | 青森 79.27年 | 青森 86.33年 |
出典:厚生労働省 令和2年都道府県別生命表
16位でも、沖縄の女性は全国平均を上回っています。男性は下回っています。
延びてはいる、ただ遅い
順位の低下は、平均寿命の低下ではありません。厚生労働省の年次推移表では、沖縄の男性の平均寿命は1975年の72.15年から2020年の80.73年へ、女性は78.96年から87.88年へ延びています。県の健康増進計画によると、2015年から2020年の間だけでも、男性は0.46年、女性は0.44年延びました。厚生労働省の年次推移表では、この間の男性の延びは全都道府県で最も小さく、女性は47都道府県中37位でした。ほとんどの県がもっと延びたため、順位が下がったのです。
高齢者はいまも際立っている
令和2年の生命表には高齢での平均余命もあり、そこでは沖縄は上位にいます。
| 平均余命(2020年) | 沖縄 | 順位 |
|---|---|---|
| 女性 65歳 | 25.44年 | 1位 |
| 女性 75歳 | 16.85年 | 1位 |
| 男性 75歳 | 12.93年 | 2位(1位は長野) |
| 男性 65歳 | 20.07年 | 15位 |
出典:厚生労働省 令和2年都道府県別生命表 表2-1・2-2
2020年、沖縄の女性の平均余命は65歳でも75歳でも47都道府県で最も高くなっています。厚生労働省自身も、出生時から75歳にかけて男性の順位が大きく上がる県として沖縄を挙げており、女性の順位も上がります。出生時の平均寿命には若い年齢での死亡も反映されます。沖縄の統計がいちばん悪く見えるのは、そこです。
差が開くのは働く世代
沖縄県の健康増進計画「健康おきなわ21(第3次)」(2024年3月策定、2024年度から2035年度まで)は、20〜64歳についてこんな数字を示しています。2021年の年齢調整死亡率は、沖縄の男性が人口10万人あたり345.9で、全国の253.1の1.37倍。女性は150.9で、全国の126.9の1.19倍です。計画は、率自体は下がっているものの、全国との差は広がっているとしています。
計画の第1章は、働く世代の健康を大きな課題とし、県の施策が「平均寿命日本一おきなわ」の復活をめざしてきたと書いています。知事を本部長とする県の組織「健康長寿おきなわ復活推進本部」に2024年3月に示された資料は、全国と比べた課題を挙げています。
- 体重: 40〜69歳でBMI 25以上の人の割合が男女とも増えており、全国を大きく上回る。
- 飲酒: 純アルコールで1日40g以上飲む男性、20g以上飲む女性の割合が全国より高い。
- 歩数: 20〜64歳の1日の平均歩数が男女とも全国を下回る。
- 野菜と果物: すべての年代で目標量に届かない。
医療の現状の章は、特定健診のBMIが都道府県で最も高いこと、年齢調整死亡率が男性の肝疾患、女性の糖尿病と子宮がんで全国最悪であることも挙げています。ただし、これらが順位の低下を説明するとは書いていません。
食事はどうなのか
伝統的な食事とは何だったか
国立歴史民俗博物館研究報告に載った武井基晃氏の2023年の論文は、1972年の本土復帰の前後の沖縄の食の記録を調べています。1967年の民俗調査をもとに、調査地域ではさつまいもとさとうきびが主な作物で、豚は1世帯で年に1頭ほど、正月につぶしていたこと、魚についての記述は少ないことを紹介しています。論文は、豚肉は儀礼や栄養のうえで重要だったものの、日常的に豊富にある食べ物ではなかったとしています。また、大宜味村の高齢者39人についての1991年の調査を引き、祭りや行事で食べるものとして豚肉、豆腐、魚、米を挙げています。
論文は、時代の線引きもはっきりさせています。
「本稿で見た食文化は,長寿県としての沖縄を支えていた世代の食生活であるが,戦後の沖縄の料理は変容を遂げ,新たな要素を取り込みながら拡張し今日に至るのである。」 — 武井基晃『国立歴史民俗博物館研究報告』第241集(2023年)
英語圏でよく引かれる細かな数字、たとえば「さつまいもがカロリーの69%」などは、ブラッドリー・ウィルコックス(Bradley Willcox)らが2007年に『Annals of the New York Academy of Sciences』に発表した論文から来ています。英語版ウィキペディアはこの論文を引き、食事のデータを1950年ごろのものとしています。私たちは論文そのものを開けなかったため、その数字は確認済みとしては扱いません。いずれにせよ、このデータは20世紀半ばのもので、いまの食事ではありません。(アメリカの店でさつまいもが「yam」として売られている理由は、アメリカの店で見る日本の野菜で書きました。)
県が書いている変化
2023年に策定された「第4次沖縄県食育推進計画」は、地元の野菜や家畜、野草、海藻をもとにした伝統的な食を紹介し、よく言われる見方を「言われています」と留保つきで書いています。
「このような独特な食文化は、長い歴史や諸外国との交流、人々の生活の中で育まれ、継承されてきたものであり、沖縄の健康長寿を支えてきたと言われています。」 — 沖縄県「第4次沖縄県食育推進計画」(2023年)
同じ計画は、郷土料理の調理法や食べ方を含む伝統的な食文化が十分に受け継がれず、特色が失われつつあるとしています。背景にはグローバル化、食品流通の発達、生活様式の多様化があるといいます。家庭料理の洋風化、脂質からとるエネルギーが多すぎること、野菜不足にも触れ、30〜50代の男性の約半数、女性の5人に1人が肥満だと報告しています。
一方で、私たちが見つけられなかったものもあります。食の「欧米化」を順位低下の唯一の原因とする県の公式資料です。県は食事を、体重、飲酒、運動、働く世代の健康と並べて挙げています。Blue Zones のページはこの変化をファストフードと西洋式の食事に結びつけ、英語版ウィキペディアは「多くの要因」のひとつとして欧米化を挙げ、2012年の学術誌『Gerontology』の論評と2004年の『ニューヨーク・タイムズ』の記事を引いています(私たちはこの2つを開いていません)。県の資料は、どちらよりも慎重です。
ブルーゾーンの主張とデータ
| 英語圏でよく見る主張 | 日本の資料が示すこと |
|---|---|
| 沖縄の人がいちばん長生き | 女性は1975〜2005年、男性は1980年と1985年に全国1位だったのは事実。2020年は男性43位、女性16位。 |
| 沖縄は長寿の地(現在形) | 高齢まで生きた人については、おおむねいまも事実。女性は65歳・75歳で1位、男性は75歳で2位(2020年)。出生時では、男性は全国平均を下回る。 |
| 沖縄の人は肉をほとんど食べない | どちらのページも数字の年代を示していない。ウィキペディアがウィルコックス2007年論文(未確認)から引く食事の数字は1950年ごろのもので、1967年の調査は豚が1世帯で年に1頭ほどだったと記す。県はいま、家庭料理の洋風化と脂質のとりすぎを指摘している。 |
| 食事が長寿の理由 | 県は、食文化が長寿を支えてきた「と言われています」と書く。挙げている課題は多く、食事だけではない。 |
英語の「沖縄の食事」記事を読むときに
沖縄の長寿についての主張の多くは、三つの問いで整理できます。
- 数字は何年のものか。 20世紀半ばの食事の割合は、当時の食べ方であって、いまの沖縄の食べ方ではありません。
- 出生時の平均寿命か、65歳の平均余命か。 沖縄はこの二つで順位がまったく違います。
- 順位か、年数か。 沖縄は順位が下がる一方で、平均寿命は延び続けました。
どれも、沖縄の食べ物が体にいいとも悪いとも言うものではありません。英語圏の日本料理の記事が日本の資料からずれていく例は、英語の日本料理レシピは何を間違えているのかでも取り上げています。
よくある質問
海外では、沖縄はいまも長寿の島だと思われているのですか。 英語圏のページの多くは、そう描いています。VegNews は沖縄を「長寿の地」と現在形で紹介し、肉の割合が1パーセント未満だとしていますが、数字の年代は示していません。Blue Zones のページは、若い世代はもう伝統的な食べ方の恩恵を受けていないとも書いていますが、その注意は引用されるうちに抜け落ちがちです。
「ブルーゾーン」とは何ですか。沖縄はいまも含まれていますか。 Blue Zones という団体による呼び名です。同団体は、2000年からナショナル ジオグラフィックや長寿の研究者とともに最初の5地域を特定したとしており、ブルーゾーンの地域のひとつとして沖縄を挙げています。ただ、同団体の沖縄の食事のページ自身が、若い世代は伝統的な食べ方の恩恵を受けていないと書いています。日本の統計で強い結果が出ているのは、高齢の沖縄県民です。
沖縄の平均寿命の順位はなぜ下がったのですか。 沖縄県の計画は、ひとつの原因を挙げていません。20〜64歳の死亡率の高さ、肥満の増加、多量の飲酒、少ない歩数、野菜不足、脂質のとりすぎを指摘しています。食の欧米化だけを原因とする県の資料は見つかりませんでした。
この記事の調べ方
主に日本語の公的な資料によっています。厚生労働省の令和2年都道府県別生命表とその年次推移表、沖縄県の医療の現状の章、健康増進計画「健康おきなわ21」、第4次食育推進計画です。伝統的な食事の説明は、2023年の国立歴史民俗博物館研究報告の論文によります。英語圏の主張は、VegNews と Blue Zones が公開している文章を当サイトが訳して引きました。英語の資料が食事の割合の出典とするウィルコックスの2007年論文は開けなかったため、その数字はウィキペディアの記載として紹介するにとどめています。この記事は人口統計を紹介するもので、食事や医療についての助言ではありません。
参考資料
厚生労働省:
- 令和2年都道府県別生命表の概況 2020年版の概況
- 都道府県別にみた平均余命(PDF) 65歳・75歳の平均余命
- 都道府県別にみた平均寿命の年次推移(PDF) 平均寿命の推移
- 平均寿命の年次推移(PDF) 表2:都道府県別の平均寿命と順位の推移
- 令和2年都道府県別生命表 報道発表資料(2022年12月23日、PDF) 公表時の発表資料
沖縄県:
- 第2章 沖縄県の医療の現状(PDF) 1975〜2020年の平均寿命の順位など
- 令和5年度 健康長寿おきなわ復活推進本部(2024年3月開催、PDF) 会議資料。「26ショック」「330ショック」と課題の一覧
- 沖縄県健康増進計画「健康おきなわ21」 第3次計画のページ
- 健康おきなわ21(第3次)第1章(PDF) 計画の背景
- 健康おきなわ21(第3次)第2章(PDF) 県民の健康の現状
- 第4次沖縄県食育推進計画(2023年、PDF) 食文化の継承と食生活の変化
研究:
英語圏の資料:
- Eat Like a Blue Zoner With These Staples From the Okinawan Diet — VegNews 英語:沖縄の食材を紹介する記事
- The Okinawa Diet: Eating and Living to 100 — Blue Zones 英語:Blue Zones の沖縄の食事のページ
- Original Blue Zones Explorations — Blue Zones 英語:ブルーゾーンの調査の経緯
- Okinawa diet — Wikipedia 英語版ウィキペディアの項目


