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日本の米は「スティッキーライス」ではない:英語圏のご飯の炊き方を確かめる

英語圏では日本の米が「スティッキーライス」と呼ばれがちですが、アメリカでその名前はもち米のことです。米国の売り場、炊飯器の表示、USDAの保存ルールを、日本の資料と並べて確かめます。

ふたを開けたばかりの厚手の鍋に、炊きたての白いご飯。粒がつややかにふくらみ、湯気が立っている。

英語で日本の米の炊き方を調べると、すぐに「sticky rice(スティッキーライス)」という言葉に出会います。イギリスのミールキット会社のガイドは題名からして「How To Cook Japanese Sticky Rice」。料理情報サイトの Chowhound の記事は、すし飯の米を「短粒種のスティッキーライスの一種」と呼び(英語の原文を訳したもの)、もち米と区別していません。

気になるのは、アメリカで「スティッキーライス」といえばもち米を指すことです。この表示の袋をふだんのご飯用に買うと、日本のレシピが想定するうるち米より、ずっと粘りが強く、もちもちした米が炊き上がります。

日本の米がくっつき合うのは確かなので、そう呼びたくなるのはわかります。ただ、うるち米はスティッキーライスではありません。英語圏の情報がどこでずれるのかを、日本の資料と並べて見ていきます。

要点

  • 日本のふだんの米はうるち米で、もち米ではない短粒種・中粒種のジャポニカ米です。
  • アメリカの「スティッキーライス」はもち米のことです。米国の業界団体 USA Rice Federation も「スイートライスは、glutinous rice(もち米)やスティッキーライスとも呼ばれ…」と定義しています(英語の原文を訳したもの)。
  • アメリカで買うなら、短粒種か中粒種のジャポニカ米を選びます。代表はカリフォルニア産のカルローズです。「sushi rice」という表示は品種名ではなく売り文句です。
  • アメリカの計量カップは約236.6mLで、炊飯器の1合カップ(約180mL)とは違います。米をこれで量ると、水位線どおりでは水が足りません。
  • 炊いたご飯の保存は、アメリカではUSDAの基準に従います。冷蔵は炊いてから2時間以内、食べきるのは3〜4日以内です。

うるち米ともち米:違いはでんぷん

農林水産省によると、ふつうの精白したうるち米は、アミロースとアミロペクチンの比がおよそ2:8です。一方で「精白米(もち米)のでんぷんはほぼ100%がアミロペクチンです。」とあり、アミロースが少ないほど粘りが強く、冷めても硬くなりにくいと説明しています。

米穀安定供給確保支援機構(米ネット)はジャポニカのうるち米のアミロースを約20%、農研機構はコシヒカリを約17%(2つの表で16.8%と17.5%)としています。ミルキークイーン(9.2%、農研機構)のような低アミロース米はその中間です。

うるち米もち米(アメリカでいうスティッキーライス、スイートライス)
アミロース約17〜20%ほぼない(でんぷんのほぼすべてがアミロペクチン、農林水産省)
炊き上がりしっとりやわらかく、粒はくっつくが形は残る粘りが非常に強く、粒どうしがくっつく
日本での用途毎日の主食(米ネット)もち、赤飯(米ネット)
100gあたりのエネルギー(精白米・炊く前)342kcal343kcal

エネルギーは農林水産省が日本食品標準成分表を引いて示した値です。栄養はほぼ同じで、違うのは食感です。

日本の米がくっつくのは、でんぷんの約5分の4がアミロペクチンだからです。USA Rice も、アメリカの短粒種を「やわらかく、ほかの品種より粘りがあり、わずかに弾力がある」とする一方、スイートライスは「もち性のために粒どうしがくっつく」別の種類として分けています(いずれも英語の原文を訳したもの)。くっつくのは食感の話で、もち米は米の種類が違うのです。

アメリカの売り場では何を買うか

選ぶのは短粒種か中粒種のジャポニカ米です。アメリカの棚では、たいてい次の2つです。

  • カルローズ(Calrose)。 USA Rice は「カリフォルニアだけで栽培される、中粒種のジャポニカ米の特別なタイプ」と説明しています。1948年に Jenkin Jones と Loren Davis が育成して世に出たもので、いまはカリフォルニア産中粒米の商品名になっています。用途にはすし、ポケボウル、炒め物が挙げられています。
  • 短粒種のジャポニカ米。 コシヒカリなど日本の品種名で売られることもあり、カリフォルニア産と日本からの輸入品があります。

USA Rice の定義では、中粒種は長さが幅の2〜3倍、短粒種は「短くふっくらとして、ほとんど丸い」米です。

「sushi rice」という表示について。 米国の料理誌・料理番組で知られる America’s Test Kitchen は、「アメリカでいわゆる『sushi rice』と呼ばれる米の大半はカルローズという品種」であり、「短粒種」「中粒種」は「どちらも使われているが、規制はない」と書いています(英語の原文を訳したもの。規制がない点は同誌の指摘で、当サイトはアメリカの法令では確認していません)。アメリカの袋の「sushi rice」は売り文句と考え、粒の種類を確かめるのが確実です。

ふだんのご飯用に買ってはいけないもの: sweet rice、glutinous rice、sticky rice と書かれた米です。これはもち用です。

東洋経済オンラインに寄稿した日本の農業コンサルタントは、カルローズの炊き上がりを、日本の短粒米より粒がばらけやすく粘りが少ないとし、チャーハンやピラフ、リゾットに向くと評しています。日本で標準的な短粒米に近いものがほしいなら、短粒種のジャポニカ米を探すことになります。

洗い方:英語圏とは理由の説明が違う

日本の資料は、米を洗う目的を、精米後に残ったぬかを落とすことと説明します。米ネットは、ゆっくり洗うとぬか臭くなると注意しています。一方、象印のアメリカ向けサイトは、洗うと「余分なでんぷんが落ち、ふっくら白く炊ける」と、別の理由を挙げています(英語の原文を訳したもの)。やり方は同じです。

強く研ぐ必要はありません。パナソニックの暮らし情報サイトは、こう書いています。

現代では精米技術の進歩により、糠や汚れがほとんど残らない状態のため、それほど念入りに研ぐ必要はありません。

力を入れると米が割れるとも書いており、農林水産省も「研ぐ」より、やさしく洗うよう勧めています。

米ネット、農林水産省、象印の説明をまとめると、手順は次のとおりです。

  1. たっぷりの水を注いで軽く混ぜ、すぐに捨てる。
  2. 少量の水を入れ、指を広げてやさしく10〜20回ほどかき混ぜる。
  3. すすいで水を捨てる。これを合わせて2〜3回。農林水産省は、洗う時間を3分程度までにするよう勧めています。
  4. 水がうっすら濁る程度でやめる。パナソニックの目安は、米がかすかに透けて見えるくらいです。透明になるまで洗う必要はありません。水気をよくきります。

無洗米は「rinse-free rice」

無洗米は、農林水産省によると1991年に登場しました。象印のアメリカ向けサイトでは「rinse-free rice」と呼ばれています。洗わずに、計量を補正します。

  • 無洗米用カップがあれば使う。 三菱電機の取扱説明書では、無洗米カップは約170mL(約147g)、ふつうのカップは180mL(約150g)です。日立も専用カップを付けています。
  • 内釜に無洗米の水位線やコースがあれば使う。
  • どちらもない場合、象印のアメリカ向けサイトは「カップ1杯ごとに、米を小さじ山盛り1杯分減らす」よう勧めています(英語の原文を訳したもの)。農林水産省は、日本では水を少し多めにするのがふつうだとしています。どちらも同じずれを補う方法です。

浸水:アメリカの炊飯器の説明

米ネットは、芯が残らずふっくら炊けるよう30分以上浸し、「冬場は水温が低いので50~60分浸すとよい」としています。農林水産省は鍋で炊く場合に30分〜1時間、冷蔵庫の保存容器なら2時間としています。

炊飯器なら、たいてい自分で浸す必要はありません。 パナソニックは、主流のマイコン炊飯器には吸水の工程が組み込まれていると説明しています。象印のアメリカ向けサイトも、マイコン、IH、圧力IHの各機種について「浸水と蒸らしはプログラム済みで、不要」と書いています(英語の原文を訳したもの)。自分で浸すのは、底の熱板1枚で加熱する従来型の炊飯器だけで、象印のFAQでは約30分です。

水加減:アメリカの計量カップに注意

炊飯器の場合

炊飯器に付いているカップ(1合、約180mL)ですり切りに量り、使うコースの同じ数字の水位線まで水を入れます。象印は、標準の水位線は「短粒種・中粒種の白米向け」で、米の種類やコースごとに別の線があるとしています。

英語圏でつまずきやすいのは、アメリカの計量カップ(約236.6mL)で米を量ってしまうことです。カップの大きさが違うので、水位線どおりにすると水が足りなくなります。カップの違いはアメリカの台所で日本のレシピを作るで詳しく書いています。

鍋の場合

米ネットの標準は、洗う前の米の体積の1.2倍の水、水分の多い新米は1.1倍です。ほかの資料も近い値です。

出典体積で重さで
米ネット1.2倍(新米は1.1倍)—
パナソニック1.2倍(例:1合180mLに水200mL前後)—
農林水産省—約1.33倍(1合150gに水200mL)
大阪市約1.2倍(1合180mLに210mL)約1.4倍(1合150gに水210mL)

まとめると、米1合に水およそ200〜216mLです。無洗米は水を少し多めにします。

鍋で炊くご飯(2合)

参考までに、日本の資料にもとづく鍋炊きの手順を載せておきます。

米ネット(米穀安定供給確保支援機構)の鍋炊きの説明と、水1.2倍の比率をもとにしています。時間は鍋と火力で変わるので、目安としてください。

材料

  • 米:2合(360mL、約300g)。短粒種か中粒種のジャポニカ米
  • 水:430mL(量るなら430g)。新米は約400mL。前の表のほかの資料では少し少なく、大阪市の値で420mL、農林水産省の値で400mLです。

道具: 底の厚い、ふたのしっかり閉まる鍋

作り方

  1. 洗う。 最初の水はすぐに捨て、2〜3回やさしくすすぎ、水気をよくきります。
  2. 浸す。 米と分量の水を鍋に入れ、30分以上浸します。冬は50〜60分です。
  3. 沸騰させる(約10分)。 ふたをして中火にかけ、強火に上げて、約10分で沸騰させます。
  4. 沸騰を保つ(約5分)。 沸騰したら中火に落とし、約5分、沸騰した状態を保ちます。
  5. 弱火で炊く(10〜15分)。 弱火にして、水気がなくなるまで炊きます。
  6. 蒸らす(10分)。 火を止め、ふたをしたまま約10分おきます。米ネットは、蒸らすと粒の中の水分が均一になるとしています。農林水産省は「蒸らしの途中で蓋を開けるのは禁物。」と書いています。
  7. すぐにほぐす。 しゃもじで十字に切り込みを入れ、4分の1ずつ鍋肌に沿ってしゃもじを差し込み、底から返します。農林水産省と象印が同じ方法を紹介しています。押しつぶさないこと。米ネットによると余分な蒸気が抜け、農林水産省によると、ほぐさないと底の米がつぶれます。

工程と火加減は、米ネットの冊子の図にもとづいています。大阪市の簡単な手順では、2合は約20分で炊けるとしています。

炊飯器で炊く場合

  1. 付属のカップですり切りに量り、洗います(無洗米は洗わない)。
  2. 内釜に入れ、カップの数と同じ水位線まで水を入れます(無洗米で専用の線があればそれを使う)。
  3. 白米コースで炊きます。マイコン、IH、圧力の炊飯器なら浸水は不要です。従来型なら、スイッチを入れる前に約30分浸します。
  4. 炊き上がったらすぐにほぐします。米ネットは、電気炊飯器では蒸らしも工程に含まれているとしています。

炊いたご飯の保存:アメリカの基準

保温は「味の」上限

象印のアメリカ向けFAQは「ほとんどの炊飯器では12時間が上限」としています(英語の原文を訳したもの)。長時間保温の機能がある機種はもっと長く保てます。日立は、高めの保温温度(約74°C)では12時間以内を勧めています。パナソニックは、24時間以上保温できる機種もあるとしながら、におい、黄ばみ、乾燥、傷みが出るとして勧めていません。米ネットは、長時間の保温より冷凍を勧めています。

これらは主に味と食感の目安です。電源を切った炊飯器や、台所に出したままにしてよいという意味ではありません。

冷凍

米ネットとパナソニックの方法は同じです。温かいうちに茶碗1杯分、約150gずつ、つぶさないよう平らにしてラップで包み、人肌くらいまで冷ましてから冷凍します。パナソニックは、アルミのトレーにのせると早く凍るとしています。電子レンジでラップのまま温めます。

アメリカでは USDA に従う

安全面では、アメリカでは**米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)**の基準が目安になります。

  • 残ったご飯は、炊いてから、または保温していた器具から出してから2時間以内に冷蔵します。気温が華氏90度(約32°C)を超えるときは1時間以内です。
  • 量が多いときは浅い容器に分けて、早く冷やします。
  • 冷蔵したものは3〜4日以内に食べるか、冷凍します。冷凍した残り物は3〜4か月が目安で、それ以上でも安全ではあるものの、水分と風味が落ちるとしています。
  • 温め直しは食品用温度計で74°Cまで。

米で特に注意が要るのはセレウス菌です。食品安全委員会によると、嘔吐型のセレウス菌食中毒の原因として最も多いのは、ご飯やチャーハンを含む穀類とその加工品です。同委員会のファクトシートは次のように説明しています。

  • 芽胞は90°Cで60分の加熱にも耐えます。農林水産省のリスクプロファイルは、通常の調理条件では死なないとしています。
  • 増殖するのは約10〜50°Cです。
  • 嘔吐毒(セレウリド)は126°Cで90分加熱しても失活しないため、いったんできると、ふつうの温め直しでは壊れません。

農林水産省のリスクプロファイルは、室温に長く置いたチャーハンやピラフは食べないようはっきり書いています。厚生労働省は、十分に加熱すること、室温に放置しないこと、小分けにしてすぐ冷蔵するか65°C以上で保つこと、保存時間をできるだけ短くすることを勧めています。

補足:象印のアメリカ向けブログは、冷蔵で5日まで保存できるとしています。USDAの3〜4日より長いので、この記事ではUSDAの値をとっています。

アメリカの炊飯器の分け方

日本の米をおいしく炊くのに炊飯器は必須ではありませんが、時間の管理はほとんど任せられます。象印のアメリカ向けサイトは、加熱の方式で次のように分けています。

方式象印の説明(英語の原文を訳したもの)浸水と蒸らし
従来型「底の熱板が内釜を温める」自分で行う
マイコン「マイクロチップが米の量を判断し、制御した熱で内釜を包む」組み込み済み
IH+マイコン「内釜そのものを発熱させ、より高温にすることで、ふっくら炊ける」組み込み済み
圧力+IH+マイコン「圧力と高温の組み合わせで、風味と食感がよくなる」組み込み済み

ふっくら炊ける、風味がよくなるといった点は象印自身の説明です。パナソニックは、マイコン炊飯器の多くに、米の中心まで水を吸わせるゆるやかな予熱の工程があるとしています。

選ぶときの目安: 浸水が組み込まれていること(マイコン、IH、圧力のどれでも)、炊く米に合った水位線やコース(無洗米やすし飯を含む)、メーカーが示す保温の上限、容量です。英語圏の人に伝えるべきなのは、容量が180mLの「合」で数えられ、アメリカのカップではないという点です。当サイトは特定の機種は勧めていません。

よくある質問

英語圏では、日本の米はどう理解されていますか。 「スティッキーライス」と呼ばれることがよくあります。ただ、アメリカでその言葉が指すのはもち米で、でんぷんのほぼすべてがアミロペクチンです。日本のふだんの米はアミロースが約17〜20%のうるち米です。

アメリカの「sushi rice」は、すし用の特別な米ですか。 いいえ。アメリカの袋の「sushi rice」は売り文句で、America’s Test Kitchen によると、たいていはもち米ではない中粒種のジャポニカ米、カルローズです。日本のすし飯は酢で味をつけたご飯のことで、NHKの料理サイトは、水を少なめに、すし飯の水位線か、米と同じ体積の水で、少しかために炊くよう勧めています。

カルローズは日本の米と同じものですか。 日本の米と同じジャポニカ米で、カリフォルニアで育成され、1948年に世に出ました。東洋経済オンラインに寄稿した農業コンサルタントは、日本の短粒米より粒がばらけやすく粘りが少ないとし、チャーハンやピラフ、リゾットに向くとしています。

アメリカの計量カップで米を量ってもいいですか。 炊飯器の水位線を使うなら、よくありません。水位線は180mLのカップが前提で、アメリカのカップは約236.6mLなので、米に対して水が足りなくなります。付属のカップをなくしたら、アメリカのカップの4分の3で代わりになります。

この記事の調べ方

主に日本語の公的機関と業界の資料にもとづいています。農林水産省、米ネット(米穀安定供給確保支援機構)、農研機構、食品安全委員会、厚生労働省、大阪市、炊飯器メーカーのパナソニック、日立、三菱電機です。アメリカ側は USA Rice Federation、USDA FSIS、象印のアメリカ向けサイトを使いました。日本語資料からの引用は短くとどめています。鍋炊きの手順は、米ネットの火加減の工程と水の比率に、ほかの資料を組み合わせたもので、当サイトでは試作していません。米ネットの図は10分、5分、10〜15分、10分という時間を、それぞれの工程名を書かずに順に並べているため、順番から工程に当てはめました。

参考資料

日本語の一次資料:

アメリカの一次資料:

そのほかの資料:

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